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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

【Web特別版】『Risk Management』22年 5-6月号
2022-07-27

Risk Management

【Web特別版】

5-6月号

web特別版5-6月号表紙
INDEX

【Web特別版】より大きな絵を描く:効果的なリスクマネジメント・プログラム

レベッカ・フラー [*]


 

効果的なリスクマネジメント・プログラムの必要性

これまで歴史的に、保険契約者は、最近損失を被り、資産が保険金不足であることが判明した場合、あるいは、評価の間に経過した時間が長すぎて市場が受け入れられなくなった場合など、苦痛に直面した時点で評価会社を関与させてきた。市場の厳しさと、より良いデータを得ようとする意欲の高まりから、保険業界は現在、正確に申告された再調達原価の価格により焦点を当てている。

パンデミックの発生以来、評価をめぐるプレッシャーとプロセスの両方が変化した。保険会社はもはや見て見ぬふりをしたり、10年前の評価を受け入れたりすることはなくなり、リスクマネージャーはポートフォリオ全体のデータの一貫性と正確性を求め、取締役は地球環境、社会、ガバナンス(ESG)目標に真剣に取り組むことを期待しているため、正確な評価と効率的なプロセスの必要性が高まっている。

保険契約者にとって、大規模で、複雑な複数の管轄区にわたる財産目録を所有している場合でも、単一の不動産を所有している場合でも、保険目的のために資産の完全な再調達原価価格を知ることは極めて重要である。正確な再調達原価がわからないと、保険契約者は、資産の一部または全部が失われた場合に、保険によって十分に補償されるかどうかを確信することができない。

効果的なリスクマネジメント・プログラムは、企業が偶発的に発生する責任に備え、取締役会に洞察と支援を提供し、資源配分の改善に役立つものである。

なぜ保険の掛金不足がリスクとなるのか

最近、1,455の不動産資産を分析したところ、2020年から2021年にかけて評価された建物の68%が25%以上、19%は100%保険料が不足していることがわかった。

保険に加入していない場合、事業者は深刻な事態に直面する可能性がある。損害が発生した場合には、以下のような問題に出くわす可能性がある。

・ 既存の経営資源や事業運営への悪影響
・ 保険契約更新時の交渉力低下
・ 回収不能な金融負債

効果的なリスクマネジメント・プログラムを有することは、企業がこのような課題を克服し、損失を軽減するのに役立つ。

リスクマネジメント・プログラム

様々な産業にまたがる多国籍企業が、効果的なリスクマネジメント・プログラムの必要性を理解し、正確な不動産価値と再調達原価を決定するために評価プロバイダーと契約している。

正確な保険料の配分。ある大手多国籍エネルギー企業は、従来型の火力発電から先進的なエネルギー貯蔵設備に至るまで、発電資産の世界的ポートフォリオを有している。この会社は、4つの事業単位で合計29,688メガワットの総発電容量を稼働している。また、自社でキャプティブ会社も運営している。財産評価に対する協調的なアプローチは、当該キャプティブ会社が、すべての資産が世界的に認められた、一つの独立した評価プロバイダーによって一貫して評価されているということを主張するためには、絶対不可欠である。これにより、キャプティブ会社は保険料を正確に配分し、再保険会社の委員会に対して、申告された価値が正しいという確信を与えることができる。

定期的なレビュー。また、多国籍エネルギー企業は、評価プロバイダーと総合評価プログラム契約を結んでもいる。総合評価プログラムとは、通常、最初に現地に赴き評価して、その後、約7年間、毎年の机上レビューを行った後に、再度現地での評価が計画されているものである。この年次レビューでは、商品、エンジニアリング、調達、建設といった、すべての関連する価格の動きと、個々の資産での大きな変化が検討される。これにより、企業は正確に保険をかけ、リスクに対して備えることができる。

仮想検査。世界最大級ボトリング会社の1社は、評価サイクルを5年としている。この企業は、評価プロバイダーに構造化されたデータを一貫して提供していて、それによって評価プロセス全体を通じて効率性を高めることができる幅広い方法論を利用することができている。この企業は、評価プロバイダーに、定期的に現地訪問、机上検査、仮想検査を実施してもらっている。

グローバルな現地視察。世界最大級製薬会社の1社は、リスクマネジメントに対して模範的な姿勢を持っている。そのグローバルなポートフォリオ資産は複雑で機密を要するものでため、この企業は評価プロバイダーが各拠点で5年ごとに現地視察を行い、その間は毎年、机上からの価値を更新することを選択している。

時間と予算支出。世界的に有名な小売チェーンのフランチャイジーは、世界中に45の体験型ショッピングセンターと、500以上の小売店や配送センターを展開している。同社は、評価プログラムを改善し、評価を一元化して、より一貫性のあるデータを作成することで、保険配分に役立てたいと考えていた。その目的を達成するため、同社は評価プロバイダーと提携して評価プログラムを管理させ、現地の社内評価担当者もチームに参加させて、移動時間、リスクマネジメント時間を短縮させ、関連予算支出を削減した。

デジタル・アプリケーション。世界最大級保険会社の1社は、自社のポートフォリオと関連するリスクを管理するデジタル・アプリケーションを求めて、評価プロバイダーと提携した。同社は、評価プロバイダーの協力を得て、評価の正確性に関わる独立したアドバイスを提供することで、自社の顧客に大きな価値をもたらしている。

リスクマネジメント・プログラムを効果的にするものとは?

効果的なリスクマネジメント・プログラムを開発する鍵は、リスクマネージャーが自社のビジネスにおける評価に関連する重要な要素を評価し、より広範な事業にとって利益をもたらすフレームワークの諸要素を構造化するために適切に準備を整えることである。このフレームワークはリスクマネージャーが資産データ構造、報告要件、内部経営資源、タイミングなどの要因を適切に評価するときに、活用される。これらの要因はすべて、保険に向けた価値報告書が有効であるために、極めて重要なものである。組織やリスクマネージャーは、自社のニーズに最も適したフレームワークについて、評価パートナーに相談すべきである。

クロール社固定資産助言サービスの詳細については、次を参照のこと。
https://www.kroll.com/en/services/fixed-asset-advisory

トピックス
保険、リスクマネジメント


本翻訳は“Building a Bigger Picture: Effective Risk Management Programs”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2022/06/01/building-a-bigger-picture-effective-risk-management-programs), June, 2022,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
レベッカ・フラーはクロール社最高経営責任者兼グローバル固定資産助言サービス・リーダー

【Web特別版】調達リスクを管理するための5つの戦略

モハメッド・カフィル[*]


 

効率的な調達プロセスは、供給業者、スタッフ、消費者との一貫した信頼できる関係を提供する。しかし、調達マネージャーはサプライチェーンのあらゆる段階で、複数のリスクに対処しなければならないため、スムーズな運営プロセスを維持することは困難である。

最も一般的に直面する調達リスクとしては、不正確な内部ニーズ分析、過剰支出、供給業者の選定と管理の不備、コンプライアンス違反、不適切な契約管理、エラーを起こしやすい人間の手作業による処理などが挙げられる。

調達リスクマネジメントは、調達プロセスにおける潜在的な問題を予見し、企業をリスクから守ることを目的としている。各取引には、製品の品質、供給業者の信頼性、顧客満足度、企業の評判など、多くの重要な検討事項が含まれており、これらはすべて問題を回避するために監視されなければならない。

調達リーダーは、サプライチェーンの中核的な機能を処理するための新しい技術や戦略を探索すべきである。優れた調達リスクマネジメント計画は、組織が費用を節約し、挫折を回避し、円滑かつ効率的に運営するのに役立つ。以下は、組織が調達に関連するリスクを軽減するのに役立つ5つの戦略である。

1. 支出分析

簡単に言えば、支出分析によって、会社の資金がどのように使われているかが明らかになる。支出データを分析することで、未確認の支払い、重複、二重請求、不正またはおかしな支出、再交渉の可能性がある特定の供給業者など、調達支出に関する貴重な情報を入手することができる。

また、過去の支出を見ることは、社内のニーズ分析が不十分であるなどのリスクを回避するのに役立つ。例えば、ニーズが過大なのか過小なのか、限られた時間枠の中で仕事をしているのか、不十分な予算で仕事をしているのか、などを知ることができる。

重要な商品やサービスを単一の供給業者に依存している場合、これは大きなリスクとなる可能性がある。もしその供給業者が納期に間に合わなければ、サプライチェーン全体が混乱する可能性がある。支出分析によって、特定の供給業者に過剰な支出をしているか、あるいはごく少数の供給業者に依存しているかを特定するのに役立つ。

2. 調達の透明性を確保する

透明性の高い調達方針を導入することで、購入製品の重複を減らすことができる。加えて、可視化されたことにより、重複した要求が入念に監視され、結果的に回避されることになる。

さらに、すべてのプロセスが透明化されていれば、あらゆる取引のデジタル証跡をたどることができ、個人の闇購買や不正支出を阻止することができる。誰が購入し、誰が承認しているのか、透明性が高ければ高いほど、より多くの節約と効率向上を果たすことができる。

また、会社の方針を破る傾向がある人物を特定し、その理由を理解し、特定した問題に対処する方法を考案することが、はるかに簡単になる。

3. 供給業者の整理

単一製品または関連製品のために複数の供給業者を持つことは、各供給業者を追跡することを難しくするため、困難な課題である。供給業者を少なくすれば、会社の財務的健全性に影響を与える価格不安定性などのリスクに対する安全性を確保するなど、組織はより焦点を定めることができる。

効果的なサプライヤーの整理を通じて、調達チームは過剰支出のようなリスクを回避することができる。組織は、より少ない供給業者に対してより多くの製品を割り当てることによって、製品料金を改善することができる。全体的に、運賃、出荷およびその他の関連する輸送費用もまた、削減される。

とはいえ、事業にとって重要な主要製品およびサービスについては、複数の供給業者を持つ必要があることに留意する必要がある。この場合、複数の供給業者を持つほうが、ビジネスの成功を左右する1社だけに依存しなくて済むからである。

また、主要な製品について複数の供給業者を持つことで、需要がピークに達したときにボトルネックが発生しないようにすることができる。さらに、不測の事態にも柔軟に対応することができる。

4. 供給業者との関係管理

供給業者と強固な関係を持つことは、大いに効果がある。供給業者を効果的に管理することで、納期遅れや不良品など、サプライチェーンの混乱を回避することができる。さらに、可視性を高めることで、起こりうる危険の特定と軽減にも役立つ。

供給業者管理ソフトウェアとオンライン在庫管理は、供給業者を追跡して、供給業者情報を容易に確認し、あり得る供給リスクを検出し、パフォーマンスを測定するのに役立つ。また、パフォーマンスの追跡から得られた情報は、将来的な供給業者の選定ミスや非倫理的な調達の回避、および潜在的な問題の特定に役立つ。

5. コンプライアンス

契約遵守は重要な分野であり、定期的に見直されるべきである。これは、供給業者が品質の高い商品をタイムリーに提供するなど、あらかじめ設定された条件をどれだけ効果的に遵守しているかを判断するのに役立つ。

この指標は、完全に履行された契約の割合、および合意されたすべての要件が満たされているかどうかを示すものである。これらを満たすことで、供給業者とのコミュニケーションを深め、コンプライアンス違反の規制を強化し、懸念事項を迅速にフォローアップすることができる。

さらに、コンプライアンスを重視することで、社内のプロセスを抑制し、組織内の支出を規制することができるため、社内の利害関係者による過剰な支出を排除することもできる。コンプライアンス率が高ければ高いほど、購買プロセスで発生する無駄が少なくなる。

 

トピックス
コンプライアンス、全社的リスクマネジメント、リスクマネジメント、サプライチェーン


本翻訳は“5 Strategies to Manage Procurement Risk”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2022/06/13/5-strategies-to-manage-procurement-risk), June, 2022,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です

モハメッド・カフィルは資格を持つ調達コンサルタント。企業を指導し、強靱なデジタル調達業務モデルを確立している。調達ソフトウェア・プロバイダーのキスフロウ・プロキュアメント・クラウド社と協力し、中規模・大規模企業のデジタル改革プロジェクトを支援。

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