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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

『Risk Management』22年9月号
2022-10-31

Risk Management

9月号

9月号表紙
INDEX

より効果的なコミュニケーションを作り込む方法

ハーパー・ウェルズ [*]


ここ数年、企業の活動のあり方に大きな変化が見られる。おそらく最も顕著なのは、COVID-19のパンデミックに対応して、ハイブリッドあるいは完全なリモートワークモデルに移行した組織が数え切れないほど多かったことである。現在、米国のフルタイム労働者4人のうち3人以上が、少なくとも部分的にリモートで働いている。

この新しいダイナミックな動きは、コンプライアンス担当者が従業員や関連する第三者とコミュニケーションをとる方法を変えているかを明らかにしている。コンプライアンスに関する共通の懸念は、新しい職場環境においてはより困難である。さらに、ハイブリッドあるいはリモートワークへの移行は、新たなリスクと課題をもたらしている。そして、多くの組織の既存のコンプライアンス・プログラムは、もはや目的にかなうものではないのかもしれない。

これらの新たな課題やリスク要因を踏まえて、企業は、コンプライアンス・プログラムが適切に設計され、今も効果的に機能していることを実証する準備をしておかなければならない。コンプライアンス担当者にとって新しいガイドラインは、効果的なコミュニケーションの重要性を強調している。以下の実践的アプローチは、特にハイブリッドあるいはリモートワークの環境において、この重要な技能の強化に役立つものである。

コンプライアンス担当者への3つの質問

2020年6月1日、司法省刑事局(DOJ)はコーポレート・コンプライアンス・プログラム評価(ECCP)の最新版を発表した。改訂されたECCPは不正行為、起訴決定、および解決のそれぞれの時点で検察官が尋ねるべき3つの基本的な質問に焦点を当て、それまでのガイダンスを明確にして再編成し補足している。司法省は、検察官に対して、これらの段階において、以下のことを尋ねように勧告している。

1. 企業のコンプライアンス・プログラムは適切に設計されているか。
2. プログラムは真摯に、誠実に適用されているか。(言い換えれば、プログラムには、効果的に機能するように十分な資源と権限を与えられているか)。
3. 企業のコンプライアンス・プログラムは実際に機能しているか。

今回の改訂では、司法省が評価、モニタリング、研修、政策、コミュニケーションなどの手段を通じて、組織がリスクを積極的に軽減し、不正行為を防止するプログラムを実施することを組織に期待していることが明らかになった。実際、司法省は最新のECCPで約20回「コミュニケーション」という言葉を使用しており、企業が従業員に適切な方法で職務を遂行できるように、あらゆる種類のガイダンスを提供することを期待していることを強調している。この種のコミュニケーションは、新しくハイブリッド化された、あるいは完全に仮想的な仕事環境では特に重要である。

効果的なコミュニケーションのための戦略

2020年のECCPでは、効果的なコミュニケーションの重要性とコンプライアンスの果たす役割が強調されているが、この目標をどのように達成するかは、コンプライアンス専門家に任されている。 以下の実践的なアプローチは、従業員とのコミュニケーションを改善するのに役立つものである。

1. マーケターのようにコミュニケーションをとる。契約書の内容をよく理解しないまま、ただ読み飛ばして契約に同意したりしたことが、何度もあるだろう。情報過多が身近になった世界で、読み手の読み飛ばしが常態化していることは驚くことではない。従業員が適切な方法で仕事を行う方法を知っていることは重要であるが、関連する方針や情報をどのように提供するかによって、より大きな影響を与え、より魅力的なものになりうる。

問題は、インパクトがあり、魅力的な情報とはどのようなものかということである。特に、ハイブリッドやリモートの職場では、社員はより多くのことに気を取られ、組織の価値や方針、手続きにあまり関心を示さないかもしれない。エンゲージメントと読者の行動を改善するためには、マーケティングに重点を置くことが有効である。たとえば、以下のようなことである。

・ 短く要点をまとめる。 契約やそれに関連する最新情報を、3から4つの箇条書きにして一目でわかるようにまとめる。「私にとって、何が重要か」に焦点を当てて、個々人の役割に具体的な助言がどのように当てはまるのかを説明することに重点を置く。
・ 複数のチャネルを活用する。たくさんの通信チャネルが定期的に利用されているため、電子メールはもはや絶対確実な選択肢ではない。イントラネット、スラック、ズームなどのチャネルを活用して、従業員がいる場所で従業員にコンタクトするのである。
・ ストーリー・テリング・アプローチをとる。より長いコミュニケーションを送る必要がある場合は、従業員の感情的、人間的側面をアピールし、物語的なアプローチをとる。従業員の役に立つリソースを共有する。役立つチェックリストやジョブ支援ツールで、従業員との接点を増やすようにする。また、実際のコンプライアンス違反、あるいはコンプライアンス違反と思われる問題を、社内の担当者、あるいは従業員専用の通報窓口に報告できるような選択肢を常に用意しておく。
・ 双方向のコミュニケーションを図る。 コミュニケーションは双方向のものであるか、少なくともそうであるべきである。透明性と双方向のコミュニケーションを確保し、従業員を参加させ、従業員の発言力を高めるのである。
・ 効果のあるものに基づいて、最適化する。自分が先に進んでいるときは、そこでやめることはしない。何が効果を出しているのかを学び、学んだことに基づいて変えていく。

2. 中間管理職の雰囲気を評価する。管理者と監督者の雰囲気は、組織に最も大きな影響を与える。従業員は、多くの場合上級管理者や経営幹部と切り離されていることが多く、管理者が直属の部署や直属の部下に指示を出すことになる。特に、ハイブリッドやリモートワークの環境では、従業員との交流が少なくなったり、かつてとは異なるものになったりすることがある。

管理者の関与は、コンプライアンス文化の育成と維持に特に影響力を持つ。エシスフェア社の報告によれば、倫理やコンプライアンスに関する話題を頻繁に話し合う従業員は、報復防止に対する管理者のコミットメントを信頼している割合が90%高いという。一方、こうした話題について話し合うことのない従業員は、報復防止策への自社のコミットメントを信頼する可能性が89%低いという結果を示している。

管理者を通じた魅力的なコミュニケーションの提供が重要である。変革マネジメントのようにアプローチし、まず管理者の賛同を得る。その上で、倫理やコンプライアンスに関する双方向の話し合いの中で、管理者が従業員と共有する期待値を設定し、すぐに使えるツールやジョブ支援ツールを提供することができる。

3. データ重視のコミュニケーションを活用する。コミュニケーションは、ほとんどの従業員にとって一般的なものであり、よりリスクの高いグループにとってはより重要である。司法省は、よりリスクの高い従業員と管理者、特にプロセスのゲートキーパーと承認権限を持つ者に焦点を当てることを勧告している。

一般に、従業員が理解して適用するのが難しい、一律的なメッセージは避ける。組織のリスクスコアカードは目標を評価し、高リスクグループに合わせたコミュニケーションを推進するために使用される。こうしたマイクロカルチャーを評価する際には、コミュニケーションは常にそのグループ固有のリーダーシップ・チェーンから行われるべきである。

バーチャルな仕事場のリスクを軽減し、コンプライアンスを維持する

ハイブリッドでバーチャルな職場環境は、確かに新たなコンプライアンス上のリスクと課題をもたらす。しかし、こうした新しい働き方は、コンプライアンス担当者に、特に従業員とのコミュニケーションのあり方について、新たな機会をもたらしている。

ハイブリッドでバーチャルな職場環境でコンプライアンスを維持するためには、企業はリスクを軽減する措置を講じ、確実に従業員が適切に訓練され、職場環境が整備され、支援されなければならない。適切なアプローチを取ることで、組織メンバーを関与させながら、企業の基準や方針に従う準備を整えることができる。

トピックス
コンプライアンス、COVID-19、人的資源、法的リスク


注意事項:本翻訳は“How to Craft More Effective Communications ”, Risk Management, , September-October, pp. 16-17をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

ハーパー・ウェルズはラーニング・プール社コンプライアンス担当取締役、倫理とコンプライアンス専門家から成るザ・トゥルー・ノース・コンファレンスの議長。

公平な昇進によりDEIを推進する

ナターシャ・ニコルソン [*]


多様性(ダイバーシティ)、公平性(エクイティ)、一体性(インクルージョン)(DEI)に関して、幅広い業界の企業が明白な態度を持つようになっている。彼らは、組織の多様性を構築することと、多様性の力を真に引き出すために必要とされる一体性と公平性を発展させることは、まったく別のことであることに気づいている。人的資源管理協会(SHRM)の報告書、『公平性を向上させる:多様性と一体性の実態』によれば、「約8割の企業が、ただその場の流れに身を任せるだけで、説明責任を果たしていない」ことは明らかである。また、HRリサーチ・インスティテュートの調査では、DEIの取り組みの多くは成果を上げておらず、回答者のわずか9%だけしか自社のDEIプログラムを非常に効果的と評価していない。

「企業は多様な職場文化を支える公平で一体的な構造を整備することなく、多様性を優先させている」と、サイバーセキュリティテクノロジー企業エクスベル社DEI担当取締役キャンディス・ブリストウは言う。「現実的には、本当に多様な労働力を創出する前に、すべての従業員を支援する公平で一体的な取り組みを行わなければならない。チームがどんなに多様であっても、公平なプログラムや一体的な環境を提供しなければ、DEIの取り組みは失敗する。」

組織はステークホルダーが期待する真の一体性と公平性を可能にする文化、プロセス、システムを確立するために、具体的な措置を講じなければならない。一体的な文化を創造しようとするとき、従業員の昇進は、企業のDEIへのコミットメントを本当に示すことができる不可欠なパズルの重要なピースの一つである。

リスクマネジメント専門家、特に人的資源部門の専門家が、一体性と公平性の向上に向けて、企業を現実的で可視的な形で前進させるためには、次の5つの方法がある。

1. 共有された理解に向けて学習する文化を育む

従業員の昇進に関する特定の経営慣行を考察する前に、従業員の行動に与える文化とその影響について、一歩踏み込んで考えておく必要がある。文化に影響を与えるためには、従業員は一体性と公平性に関する定義と、それが実際に意味すること、そしてそれを達成するために必要となる行動の変化について共通の理解を持つことが必要である。

これを達成する最善の方法は学習する文化の育成である。J. ヨジュド・チェン教授とボリス・グロイバーグ教授は、ハーバード・ビジネス・レビューの中で、一体性のある企業に共通するものを調査し、「非常に多様で一体性があると評価された組織のうち14%は、学習を最も顕著な文化スタイルとする組織文化を持っていた」と報告している。これに対して、多様性と一体性が、「全くない、あるいは、あまりない」と評価された組織で、学習を最も顕著なスタイルであると評価したのはわずか8%であった。」

一体性のある学習文化を育成する万能なモデルは存在しないが、それを達成するための基本的な考え方や概念はいくつか存在している。第一に、DEIが組織の全員にもたらす価値を認識させることである。第二に、従業員と管理者が困難な状況をどうやって切り抜けるのかに役立つ、微妙で、関連性があり、一体性のある複雑な状況を学習することを、教育と訓練が確実に提供することである。最後に、メンタリング、スポンサーシップ、従業員支援グループなど一体性のある文化の構築に役立つ補完的な活動を教育に利用することである。これらの取り組みを組み合わせることで、学習文化が生まれる。このことにより、より公平な従業員の昇進制度を開発・維持する組織能力に影響を与えるシステムおよびプロセスを実行に移すための舞台を設定することになる。

2. 適任の候補者を特定する一体性のある方法をつくる

企業にとって、結束の強いグループを持つことは珍しいことではない。それは、人間が欲して強く望む仲間意識の重要な要素である。しかし、この課題での一つのマイナス面は、管理者と意思決定者がうかつにも、自分の判断の範囲内だけで従業員を昇進させようとすることである。加えて、人々は自分と同じような人を信頼し、惹かれる傾向がある。その結果、他の従業員の機会を遮断するといった閉鎖的な文化が永続するかもしれない。

そうした状況では、企業はリスクを抱え込むことになり、過小評価された従業員が看過され、均質な文化が一体性と公平性を高める際の障壁となる。このサイクルを断ち切る1つのステップは、適任の候補者を特定する方法を拡大することである。最初の方法は、全社員が社内での昇進機会を認識できるようにするとともに、管理者は、誰が新しいポジションにふさわしいのかを広くオープンに考えるようすることである。つまり、管理者に対しても、最も一体性のある選考方法についてガイダンスを提供し、潜在的候補者の見方を広げるのに役立つ新しいシステムやプロセスを構築することである。

これに関連するステップは、委員会を設置することである。著者とDEI専門家ジェニファー・ブラウンの洞察を基にしてSHRMは、CEOの1ないし2レベル下の影響力のあるリーダーから8から12人の専門委員会の設置を提案している。SHRMは、「理想的には、委員会は多様な労働力の採用、維持、向上に関する目標設定、そして過小評価された従業員グループの中での従業員のエンゲージメント問題への対処に関わるべきである」と助言している。

3. 適任な候補者となる人材を育成する

驚くことではないが、管理者は、従業員の昇進を促す最良の場所にいることが多い。マッキンゼー社は昇進格差の是正に関する最近の報告で、「第一線にいる社員のうち、キャリアアップを支援する管理者をキャリアアップのカギとして挙げた者は73%」であり、「昇進する前線の社員は、管理者主導のキャリアアップディスカッションを頻繁に行っており(同僚よりも23%高い)、管理者からプラスのフィードバックを受けている(同僚より15%高い)」としている。

また、キャリア・メンターシップは有能な候補者の育成にも役立つ。マッキンゼー社のもう一つの報告書では、次のように主張している。「最初の30日間は、新入社員を正式または非公式のコーチングを提供できる社内メンターと結びつけることが有効である。特に、前線の従業員の流動性が低い場合や、管理者が専門能力開発を支援する能力を持っていない場合には有効である。このようなメンタリング『スタッフ・アンバサダー』の役割は、現職の従業員にとって独特のスキル構築の機会となり得る」。

フォーブス・カウンシルのメンバーでDEI専門家であるジャッキー・ファーガソンによると、メンターシップとスポンサーシップは職場の連結性を高め、人々の潜在能力発揮を支援する。メンターシップとスポンサーシップの違いを明らかにするために、「メンターは様々な経験レベルのロールモデルであり、コーチング、フィードバック、コネクション、アドバイスを通して直接1対1の指導を提供することで、専門家の成長を促進する」と彼女は指摘する。メンターシップは、従業員の目標を明確にし、前進の道筋を示すのに役立つかもしれない。これとは対照的に、スポンサーは昇進の勧め、仕事の機会の共有、紹介、プログラムへの推薦など、機会を作りキャリアを前進させる影響力を行使することに賛同する、特定のシニアレベルのリーダーである。

4. 候補者の面接と評価で一体化プロセスを開始する

昇進をより一体化するためには、マネジャーが恣意的で主観的な意思決定を助長する可能性のある、古い習慣やプロトコルを打ち破ることも必要になるかもしれない。こうした悪い習慣の中には、常に同じ従業員に推薦候補者を尋ね、管理職が昇進の意思決定をする際に他の従業員と相談しないという自己中心的アプローチをとることが含まれる。

この課題に対しては、いくつかの方法がある。まず、昇進の基準を策定することである。これによって候補者を評価する際の、非一貫性を高める可能性があるからである。例えば、部門横断的で多様な評価者のパネルを用いるなど、意思決定プロセスを様々な視点や声を含めた、確実に幅広いものにすることである。各候補者に寄せられた面接担当者のフィードバックを追跡し記録する。管理者が各候補者の長所を評価する過程で、自分の偏見を排除できるよう支援する。管理者には、バイアスがみえないものであることを思い出させてほしい。われわれは、全員がバイアスに陥る。そして、自分の考えからバイアスを取り除くためには、注意深い自覚が必要である。最後に、プロセスの最後の段階で、当初の昇進基準を見直すことによって、決めた意図に再び立ち戻ることができる。

5. 選好されなかった候補者に対して一体性を仕掛ける

社内での採用活動では、選考に漏れた候補者が出てくる。このグループは、チャンスであると同時にリスクでもある。ハーバード・ビジネス・レビューの論文に記載されているように、コーネル大学とペンシルベニア州の研究者チームは、このグループを取り巻く状況を調査し組織リスクの観点から、「社内採用された候補者や全く転職に応募しなかった候補者に比べて、不採用となった内部候補者は、組織を離れる可能性が2倍近い」ことを明らかにした。さらに、「失われる生産性は、これらの従業員の代わりを探し出すコストとあわせて、多くの場合かなりの負担になる」と付け加えている。

この調査から得られた重要な知見は、「従業員は、今すぐ新しい仕事をしたいという理由だけで応募しているのではなく、将来どのような機会があるのかを学ぶために応募している」ということである。そのため、彼らが成功するための道を開くことが重要なのである。研究者らが指摘しているように、「社内の人材市場を戦略的に管理する企業は、不採用者を引き留めるようにうまく立ち回っている」のである。

トピックス
多様性と一体性、従業員の便益、人的資源、レピュテーション・リスク


注意事項:本翻訳は“Promoting DEI Through Equitable Advancement ”, Risk Management, , September-October, pp. 10-11をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

ナターシャ・ニコルソンは多様性、公平性、一体性、ハラスメント防止研修に焦点を当てたe-ラーニング企業、コントラ・トレーニングソルーション社シニア・コンテンツ・マーケティング・マネジャー。

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