現代の組織は、不確実性と複雑さに満ちた不安定な環境で運営されている。さらに、組織とエコシステムの相互依存性は大きく複雑になり、リスク専門家にとってリスクの検出と管理ははるかに困難になっている。
　世界経済フォーラムの「グローバル・リスク・レポート2023（注1）」からの重要な発見事項は、上位リスクは3～5年ごとに変化するというものである。また、リスクは増々外部から生じている。例えば、COVID-19のパンデミックは、ビジネスの継続性に関して、いくつかの脆弱性を浮き彫りにしたが、一方、気候リスクは、世界的にビジネスと運営を脅かし続けている。
　進歩的な組織は、すべての事業部門と協力し、戦略的リスクを含む企業全体のリスクを管理する権限を持つ全社的リスクマネジメント機能を構築している。 したがって、最高リスク責任者（CRO）は、ガバナンスとコンプライアンスだけに限定されないように、より成熟したリスク対応アプローチを必要とする。 このアプローチでは、従来のリスク機能を、さまざまな手法を用いて多様なリスクを異なる方法で管理する戦略的リスク機能に変換する必要がある。
　しかし、ほとんどのリスク・プログラムは、予期しないリスクイベントや予測されるリスクイベントに対する組織の強靭性の向上に重点を置いている。企業の強靭性を向上させることは重要ではあるが、それだけに焦点を当てるのであれば、リスク機能は戦略的なものとはみなされない。戦略的であるとみなされるためには、リスク機能によって高度なリスク知能を持つ組織となるよう努力すべきである。