Risk Management
9-10月号
- DEIプログラムの潜在的な法律上の落とし穴を回避する
DEIプログラムの潜在的な法律上の落とし穴を回避する
ショーン・リビー、ステファン・パスクオフ[*]
大学の入学選考において差別是正措置方針を覆すという連邦最高裁の判決は、職場の多様性、公平性、一体性(DEI)プログラムの実行可能性について、多くの雇用者に懸念を抱かせている。男女雇用機会均等委員会(EEOC)は、この判決が「多様で包括的な労働力を育成するための雇用者の取り組みに言及するものではない」と指摘しているが、この見解はすでに論争の的となっている。
判決が下された直後、フォーチュン100社のCEOは、「明確に人種に基づく取り組み」の違法性を主張する書簡を13人の州検事総長(SAG)から受け取った。ところが、「歴史的な不平等に対処し、職場の多様性を高め、一体的な環境を作り出す」ための企業努力は、「州法と連邦法の精神」に従っているとの書簡を、21人から受け取った。民間の雇用者にとっての直接的な影響は、DEIの取り組みに対する監視の目が厳しくなることであり、関連する訴訟が提起される可能性である。実際、国際的な法律事務所が提供する多様性フェローシップの合法性に異議を申し立てる訴訟が最近2件起こされた。
その結果、雇用者は、多様で一体的な労働力を確保する際に大きな課題に直面している。リスクを最小限に抑えるために、雇用者は法的状況の変化を監視し、潜在的な賠償責任の分野に関連して、DEIプログラムの徹底的な見直しを検討すべきである。
DEIに対する法律的状況
公平な入学選考を求める学生対ハーバード大学学長・研究員の裁判において、最高裁は、ハーバード大学とノースカロライナ大学の差別是正措置プログラムを違法とした。裁判所は、これらのプログラムは、十分には測定可能ではないし、表明された目標と結びついていないため、厳密な調査には耐えられないと判断した。また、入学選考過程で人種に基づいて「ステレオタイプないしはネガティブ」と判断することは許されないし、それは論理的な帰結にはならないとした。しかしながら、裁判所は、「差別、インスピレーション、その他を問わず」、人種が人の人生にどのような影響を与えたかについて、大学側は志願者それぞれが語ることを検討し続けることはできると指摘した。
この判決に至る際、裁判所は、合衆国憲法修正第14条の平等保護条項および1964年公民権法第6編に照らして差別是正措置プログラムを検討した。一般的に、民間の雇用者は公民権法第7編の下で、職場差別を行うことを禁止されている。「公正な入学選考を求める学生対ハーバード大学学長・研究員」の判決は、ほとんどの雇用主のDEIプログラムに直接的かつ直ちに影響を与えるものではないが、最高裁判事の大多数が、「皮膚の色を気にしない」努力を通してではなく、人種区別含む行動を通して差別と闘う試みに対して懐疑的であることを示唆している。
今回の判決とは別に、第7編では、一般的に民間の雇用者は、人種、国籍およびその他の保護されている個人的特徴に基づいて雇用決定を行うことが禁止されていることを明確にしている。公正な入学選考を求める学生vsハーバード大学学長・研究員の判決では、人種が入学志願者の人生にどのような影響を与えたかを考慮することは大学に求められるとされたが、採用の判断の根拠としては許されないものと考えられた。しかし、裁判所は、第7編を、人種に配慮した多様性のための努力を認めるものと解釈している。例えば、最高裁は以前、「人種を分けて階層化する古いパターンを崩壊させる」ことを目標とし、白人労働者から「不必要に利益を奪う」ことのない、人種に基づく差別是正措置プログラムを支持していた。裁判所はその後、この解釈を性差に基づく差別是正措置を認めるまでに拡張した。
EEOCは、第7編に準拠した差別是正措置計画を作成しようとする民間の雇用者を規制している。合法的であるためには、計画またはプログラムは文書化され、日付を付け、次のものを含まねばならない。すなわち、(1)雇用者にとって重要な雇用慣行についての合理的な自己分析、(2)雇用慣行が、以前に雇用や昇進を拒否、または特定の集団に悪影響を及ぼし、事前の差別を是正しないないしは差別待遇をもたらしていた慣行に対して、逆の効果を及ぼすと結論付けられる合理的な根拠、(3)特定された問題に対処するために狭い範囲に適用される合理的な行動、の3つである。
これらの要件の特別さを考慮すると、多くのDEIプログラムは現在のEEOCのガイドラインを満たしていない可能性がある。したがって、特定の人種や性別を支持するDEIプログラム、あるいは雇用決定における人種や性別を「プラス」要素として扱うDEIプログラムには、法的リスクが伴う。このことは、公式な差別是正措置の外で歴史的な差別や不平等と闘う努力にとっての終焉の前兆である必要はないが、雇用者は、今後このような取り組みや文書化を進める際には慎重であるべきである。
内部プロセスを評価する
法的リスクを最小限に抑えるために、雇用者は体系的な差別的パターン、日常的な差別的待遇、あるいは明白な差別とハラスメントに確実に巻き込まれないように、自らのプロセスを再評価すべきである。雇用差別の歴史的な遺産は、微妙であるか明白なものかどうかに関わらず、雇用の決定に影響を及ぼす可能性がある。EEOCは50年以上にわたって職場での差別を調査してきた。その数はここ数十年で減少傾向にあるものの、それでも2022年には依然として人種差別の告発を2万1,000件近く受け付けている。
組織は、過去の慣行が現在の従業員の意思決定にどのように影響しているかを検討すべきである。組織は、自らの行動や意思決定の影響を調整し、管理することによって、歴史的に差別を引き起こしてきた行動パターンが継続しないようにすることができる。このプロセスは、恣意的な人数割当を設定し、合理的なビジネス上の基準なしに個々の意思決定を強要することを意味するわけではない。
組織内の多様性を促進するために、雇用者は、採用のための入り口を、多様な会員組織、国内の地域、および歴史的に黒人の多いカレッジや大学(HBCU)などの学術機関に拡張することができる。また、より多くの従業員に対してメンターシップ、コーチング、リーダーシップ開発の機会を提供することもできる。その際の法的リスクを軽減するために、組織は人種、性別、その他の保護すべき特性に基づいて、選好を述べたり、企業として割当を与えたりすることは避けるべきである。
価値に投資する
公的声明、行動規範、ハンドブックなどで表明されているかどうかにかかわらず、すべての組織は価値観を持っている。これらの価値観は、DEIに関連する目標の設定を含め、基準と実践を確立する際の指針となるべきである。このような目標を策定するにあたり、組織はEEOCの標準的な人種や民族のカテゴリーを超えた多様性を考慮すべきであり、それは最高裁が指摘するように、一体化に届かなったり、一体化し過ぎたり、別のタイプの多様性を捉えるものではなかったりする可能性がある。組織は、社会的地位の低い特定のグループの機会を拡大し、他のグループの機会を犠牲にするといった取り組みや、最も優秀な人材の確保に注力しないといった取り組みに注意すべきである。こうした価値観を合理的なDEIの目標に組み込むことによって、組織は違法な差別のリスクを抑えつつ、最善の結果をもたらす文化を築くことができる。
前進するための道筋
より広い意味では、DEIプログラムのための運用上および法律上のビジョンには、以下の5つの目標が含まれるべきである。
- 差別是正措置とDEI努力は、組織の価値観や法律に則り、経営幹部やリーダーがこれらの取り組みを理解し、伝えることができるようにする。
- 一貫性のある正当な職務関連基準に基づいて、幅広い職場コミュニティと人材源から最高の人材を雇用し昇進させる。
- ビジネス・ニーズに基づいてシステムと実践を評価するが、差別待遇や従業員グループへの差別的影響も考慮する。
- 採用決定を行う際には、特定の人数割当、明文化された優遇措置、または保護されるべき特性に基づいた「プラス」要素を提供することを避ける。
- 一体性環境を創造し、最高の成果を生み出すために、すべての従業員を職場に十分に参加させる。
組織は一体性、法的業務の尊重、遵守を強調するなど一貫した中核的行動を確立することにより、これらのDEI目的を確実に達成することができる。そして、組織は企業、チーム、外部の利害関係者に永続的な損害をもたらす原因をつくる前に、問題に対して事前準備的に取り組む文化を育てることができる。
トピックス
コンプライアンス、多様性と一体性、人材、法務リスク、リスクマネジメント
注意事項:本翻訳は“Avoiding Potential Legal Pitfalls in DEI Programs ”, Risk Management, September-October 2023, pp.4-7 をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
ショーン・リビーはジョージア州アトランタのエラルビー、トンプソン、サップ&ウィルソン法律事務所パートナー。
ステファン・パスクオフは、ELI(エンプロイメント・ラーニング・イノベーション)社創業者兼CEO。
- 最近のFCPA判例からのコンプライアンスでの教訓
- 継続中のロシア制裁から生じる主要なリスク動向
継続中のロシア制裁から生じる主要なリスク動向
ジョエル・ランゲ[*]
ロシアとウクライナの戦争から1年半以上が経過し、世界中の規制機関がロシアの大手銀行、企業やビジネスエリートに制裁を課し続けて、1兆7,800億ドルのロシア経済を危うくし、紛争に資金を提供する能力を損なわせ続けている。
こうした急速に変化する規制の変化は、金融機関とグローバル企業への負担を大きく増加させてきた。制裁措置はロシアに対する西欧諸国の戦いを前進させる上で依然として重要な手段であるので、リスクマネジメントとコンプライアンスのチームは、以下の主要分野における動向を綿密に監視する必要がある。
石油禁輸措置の強化
石油・ガス産業はロシア経済の頼みの綱であり、西欧諸国の制裁体制の主要な目標となってきた。石油価格の上限とロシアからの石油製品の輸入禁止は、ウクライナ戦争に資金を提供するモスクワの能力を制限するためにG7諸国によってうまくまとめられた戦略の一部である。しかし、いくつかのチャネルを通じた回避努力は、ロシア石油の禁輸措置を弱体化してきた。
中国とインドはロシアの主要な石油購入国となっており、国際エネルギー機関の推計によれば、2023年7月と8月のロシアの石油輸出量の50〜80%は両国だけで占められている。また、各国政府はG7が課した1バレル当たり60ドルの価格上限を超えて購入される可能性のある、ロシア産石油を輸送するタンカーの影の船団について懸念を抱いている。一般的には、ダミー会社の不透明なネットワークによって所有されているこれらの船舶は、ロシア産石油の不正販売を取り締まる新たな取り組みの一環として、ヨーロッパの港からの出航を禁止されている。
2023年6月に発効された欧州連合の対露制裁第11次パッケージは、既存のルールの抜け穴を強化することに焦点を当てている。石油輸出がロシアの経済的強靱性を強化し、クレムリンが規制回避の新たな方法を見出し続ける中で、組織はロシアの最も重要な財源を対象とした更なる行動に先んじて着手すべきである。
このような背景を踏まえ、リスクとコンプライアンスの専門家は、ロシアの制裁への対応が成功裏に進むように引き続き注意を払い、所有形態を綿密に調査して、うかつにロシアの石油取引組織や船舶を支援したり、取引したりしないようにする必要がある。
輸出管理および二次制裁を強化する
ロシアはこれまでに課された最も厳しい制裁の一部を受けているにもかかわらず、調査ジャーナリストは、西欧諸国の製品が引き続きロシアに輸入された事例を多く報告している。したがって、各国政府はロシアの軍需品を減らすことを意図した厳格な輸出統制を実施する可能性が高い。
今年に入って、英国は無人機の生産を含む「航空機部品、無線機、電子部品」など「ロシアがこれまでに探し出してきたすべての品目」の輸出禁止を発表した。EUと米国は機密の二重用途品の販売、輸出、通過制限を導入するため、同様の措置をとっている。規制機関は、民間のサプライチェーンを通じて軍事利用のための機密技術を入手しようとする疑いのある努力に対抗するため、より厳しく監視するようになる可能性が高い。
カザフスタン、トルコ、ウズベキスタン、中国、インドなどの近隣諸国を通じたロシアの輸入品の流入に対する懸念が高まっていることから、二次制裁の波が差し迫っている。これまで、クレムリンに対する一方的制裁は、報復制裁を受けるのではないかとの懸念から、他国がロシアに武器を渡すことをかなり阻んできた。
しかし、コンピューター・チップやレーザーなどの機密製品がロシアに再配送されるという報道が増えるにつれ、規制当局は回避策との闘いに注力するようになっている。例えば、EUの最新の制裁パッケージは、制裁を回避する疑いのある国々が、最終的にロシアに流入する禁止品の購入を大幅に増加させた場合、その国々への貨物の輸出を禁止する新たなメカニズムを導入した。他の国も同様である。
ロシアをめぐる貿易規制の増加の結果、グローバル企業はバリューチェーン全体の関係について、より深く企業調査を行う必要がある。企業は規制上および評判上の脅威から自らを守るために、特にロシアとの関係が知られている国で供給者および顧客の双方を継続的に監視すべきである。
回避促進者に対する新たな制裁
ウクライナ危機の初期、EUと英国はビジネスエリートを含む多くのロシア人に適用されることを確保するため、制裁規則を改正した。何千人もが指名されたが、多くのオリガルヒやクレムリン内部メンバーは、金融関係者、家族、オフショア信託、架空会社のネットワークを通じて、西欧諸国で活動を続けている。さらに事態を複雑にしようとしているロシア政府は、特定の企業がすでに制裁を受けている場合や、追加的な制裁を受ける可能性がある場合には、株主や子会社の情報を開示するようには義務付けていない。
また、ロシアのオリガルヒは自らの資産を保護するために、制裁中立的な司法権もつ国に依存している。英国国家犯罪庁および金融制裁実施局は、指定された個人およびその推進者が資産の移転を求める司法権国として、アラブ首長国連邦、トルコ、中国、ブラジル、インドおよび旧ソ連(バルト諸国やウクライナを除く)を挙げている。
これらの国々では他の地域に課された一方的制裁を実施するための法的要件は存在しないが、西欧諸国は、モスクワの戦争努力を支援する活動に対して行動をとるよう圧力を強めている。規制に従うべき企業は、政府がこれらの個人に対する取り締まりを続ける中で、ロシアのエリートおよびその推進者に関して、堅固な企業調査プロセスを確実に実施する必要がある。
効果的なリスクコントロールの必要性
2024年に入って、各国政府はウクライナとの戦いに必要な資金、物品、装備をロシアから剥奪するための行動を強化している。「制裁疲れ」が始まる中、規制機関は制裁プログラムの実効性を高めるために、抜け穴の閉鎖と制裁の回避との闘いに焦点を当てるようになってきた。
このように不安定な環境の中で、リスクとコンプライアンスの専門家の間では、取引相手管理の重要性が増している。現在実施されているさまざまな制裁回避手法を考えると、企業は制裁審査のための洗練された包括的な企業調査プロセスを実施する必要がある。結局のところ、ブラックリストに載っている企業との間接的なつながりは、法的に大きなリスクをもたらす。また、リスクの専門家が変化スピードに対応して、著しい財務上および風評上の損害のリスクを軽減するために、効果的なコンプライアンス・ツールと信頼できるデータに適時にアクセスできることも重要である。
トピックス
コンプライアンス、法務リスク、政治リスク、リスクマネジメント
注意事項:本翻訳は“Key Risk Trends from Ongoing Russia Sanctions ”, Risk Management, September-October 2023, pp.10-11 をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
ジョエル・ラングはダウジョーンズ社リスク・リサーチ担当ゼネラルマネジャー。
- オレゴン州プライバシー法は新たな課題を生み出す
- 不動産デューデリジェンスのためのチェックリスト
- 戦略的なストーリーテリング:影響力を拡大し、より良いリスクマネジメントの議論を推進する方法
戦略的なストーリーテリング:影響力を拡大し、より良いリスクマネジメントの議論を推進する方法
ジョン・P・アンコー[*]
過去数年間、組織は前例のない課題と不確実性に直面してきた。これに対して、多くの企業はビジネスのやり方を見直し、安定性と長期的な持続可能性をより重視することによって、新しいリスク環境に適応することができた。このアプローチにより、リスクマネジメントは組織の目標を達成するための重要な成功要因として位置づけられるようになった。企業は短期的・長期的な戦略に情報を提供し、利害関係者との効果的な関わりを確立し、厳格なシナリオ・プランニングを実施するために、リスクマネジメント実践を採用するようになったからである。
その過程で、リスク専門家の役割はリスクアドバイザーから、より信頼される戦略的なビジネスパートナーへと移行し始めている。この移行の一環として、リスク専門家は複雑な情報を統合し、それを取締役会から現場のスタッフに至るまで、さまざまな利害関係者グループに対して理解しやすく適切な方法で伝えるために、自分たちの知識や技能を拡大する必要がある。
多くのリスク専門家は、利害関係者をより良く関与させ、組織のリスク文化を進化させるための有用なコミュニケーション手法として、戦略的なストーリーテリングを採用することによって恩恵を受けてきた。以下では、リスク専門家の独自のニーズに合わせて、自分たちの状況に適した戦略的なストーリーテリングを実現するためのフレームワークを概説する。また、その適用可能性を説明するために、リスク専門家が通常遭遇する2つのシナリオを、フレームワークの各ステップの文脈で説明する。
計画策定
戦略的ストーリーテリングのプロセスは、利害関係者と関わる前から始まっている。コミュニケーションの計画策定段階では、目的、対象となる聴衆、伝えたいメッセージを明確にすることが重要である。
目的: コミュニケーション計画の一環として戦略的ストーリーテリングを取り入れるには、メッセージの意図された目的と結果について事前に熟考する必要がある。意図する情報を対象となる聴衆に届ける理由と、ストーリーテリングが及ぼす範囲と影響をどのように増幅できるかを検討する。その上で、メッセージの目的が情報提供なのか行動喚起なのか、どの通信チャネルを活用するのか、どのようなプラットフォームで配信するのかを決定する。ストーリーテリングの意図する目的を特定することで、意図する目的を達成するために必要となる、その後のテクニックが見えてくる。
聴衆: 聴衆者を特定することは、重要なメッセージが適切なグループや個人に確実に届くためには不可欠である。情報の影響を受けるさまざまなグループや個人を特定し、分析する必要がある。これらのグループには組織の取締役会、経営幹部、スタッフなどの内部的なものと、ベンダーや地域パートナーなどの外部的なものとがある。このプロセスの一環として、利害関係者のタイプ(例えば、第一次、第二次、第三次など)を分類することで、各グループの既得権益の程度と、これらのグループと個人の間の関係を明確にすることができる。また、それは使用する適切なコミュニケーション・チャネルについての意思決定に役立つ。
メッセージ: コミュニケーション計画の主要なメッセージや目的を決定することは、対象となる聴衆に情報の要点を確実に伝えるのに役立つ。メッセージは全体的な目標達成を支援する情報、アイデア、立ち位置から構成されるべきである。さまざまな利害関係者グループの独自の視点、嗜好、ニーズを理解し、それに対処し、対象となる各聴衆に対して意図した目的を達成するために、それに応じてメッセージを調整する。
伝達
計画プロセスを完了し、目的、聴衆、メッセージを理解したら、利害関係者をより効果的に引き込む方法によって情報を伝えるために、ストーリーを作り上げることができる。
背景: 手始めに、ストーリーの文脈または背景を確立する。そのためには、「何を」、「いつ」、「どこで」、「誰が」という情報を提供する必要がある。シナリオ/課題を特定し、それを取り巻く背景を説明し、主な登場人物や利害関係者を概説し、彼らがどの程度影響を受けるかを説明する必要がある。次に、シナリオ/課題の関連性と、そこから生じる状況を明確にすることによって、「なぜ」に対処することができる。
行動: 背景が伝えられたら、起こったリスクイベントと、それに関わった主要な利害関係者にどのような影響を与えたかを概説する。これには、利害関係者が重大な行動や決断を必要とするようになった転換点に至るまでの課題または対立を見直すことが含まれる。このようなイベントの進展により、利害関係者は自分自身を含むさまざまな視点や価値観の間でのバランスを取りながら、行動を起こしたり、意思決定を下したりすることが求められる。
転換: 課題、対立、イベントの進展を明確にしたら、とられた行動や決定を概説するべきである。これは、そうしたイベントに対して重要なステップや措置が取られる、ストーリーの中で極めて重要な転換の瞬間である。とくに、ここでは利用可能だった機会と、望ましい結果を追求するためのさまざまな行動方針や決定を評価するために取られた措置を強調することが可能である。ストーリー(あるいは組織そのもの)の中核となる価値観が試され、実行に移されるのが、この時点である。
影響: 転換点を伝えたら、次はそれぞれの利害関係者への直接的、間接的な影響を含む余波の概説をすることである。具体的には、行われた行動や決定、およびその結果として生じる成果に対して利害関係者が抱くさまざまな視点についての詳細を提供することができる。さらに、これには、最終的に正常な状態に戻る過程や、新たな課題または対立が加わったことを明確にすることも含めることができ、それによってストーリーの登場人物や利害関係者に対してさらなる行動を求めることにつながりうる。
解決: ストーリーの最後の部分は、結果をまとめ、現状に対処することに焦点を当てるべきである。特定のシナリオや課題に対応して、決定的な行動を取ったり、決断を下したりしてから、何が変わったかを明確にする。さらに、このステップは、ストーリーを通して学んだ教訓のいくつかを共有しながら、ストーリーの中での重要なメッセージ、視点、行動または意思決定を強調する機会として使うことができる。
戦略的価値を提供する
組織目標が進化するにつれて、一部のリスク専門家は、より大きな戦略的役割を担うようになっている。戦略的ストーリーテリングのフレームワークを実践に組み込むことで、リスク専門家は戦略的なビジネスパートナーとしての役割の及ぶ範囲と影響力を拡大し、組織のリスクへの取り組みを推進し、有意義な対話と情報に基づいた意思決定を促進して、それぞれの組織に持続的な価値をもたらすことができる。
トピックス
全社的リスクマネジメント、リスク評価、リスクマネジメント、戦略的リスクマネジメント
注意事項:本翻訳は“Strategic Storytelling: How to Amplify Your Impact and Drive Better Risk Management Discussions ”, Risk Management, September/October,2023, pp.18-23 をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
ジョンP・アンコーはマーシュ・カナダ公開企業グループ担当副社長。
- あなたの事業は将来を保証しているか
あなたの事業は将来を保証しているか
ニール・ホッジ[*]
多くの企業にとって、10年後にもはや存在しなくなることは想像し難いが、多くの最高経営責任者は、その恐ろしいシナリオが起こりうるものと考えている。PwCの直近の第26回世界CEO意識調査によると、CEOの40%近くは、自社が現状を変革せずに、維持したとすれば、10年後には経済的に存続することができないと考えている。その主な要因として、顧客の嗜好変化、規制の変更、スキル不足、技術の混乱、新エネルギー源への移行、サプライチェーンの混乱、新規参入者からの脅威などを挙げている。日本のCEOの4分の3近く、中国のCEOの67%は、現在のビジネスモデルが10年後も持続可能であるとは考えていなかったが、英国では22%、米国では20%しかそれを懸念していなかった。
PwCによると、これらの可能性に関する懸念は、現状維持に固執するのではなく、企業が自らを再構築し、何が可能かを再想定する必要性を強調している。例えば、オランダを拠点とする照明、オーディオ/ビジュアル事業のフィリップス社は、多国籍企業の消費者の嗜好力、医療機器技術の専門知識、データ分析と人工知能の強みを結集することによって、医療技術企業として再成長した。また、同社は当初の照明事業など一部事業から撤退したほか、重点を置いていなかった事業もあった。フィリップス社の2010年から2022年までCEOであったフランス・ファン・ホウテンは、PwCに次のように語った。「照明とヘルスケアを同時に変えるチャンスはそれほど高くないと認識しており、そこで、私たちは、選択したのであった。」
企業が自社の価値提案や将来の顧客基盤に関して徹底的に検討すれば、同様の変革が起こるかもしれない。PwC社のコンサルティング・ビジネスであるストラテジー&社のパートナー、アンドリュー・マクドウェルは「今やCEOは、これまで以上に多くのリスクを事業に関して認識しており、迅速かつ根本的に変化をもたらすダイナミクスに対して企業がより敏感であると考えている」という。「結果として、企業のコア・ビジネスが今日では、わずか数年のうちにコア・ビジネスでなくなるかもしれない。」
直近、中期、そして長期的な対応
企業が事業を継続する場合、多くの人々は、実質的な変革が余儀なくされるという見方を共有している。リスク・サービス会社シグマ・セブンのCEOアンドリュー・ハーシュは、企業が10年以内に倒産するという脅威は、「極めて現実的」であるという。この脅威は業界破壊者の台頭、地政学的リスクに起因するインフレやサプライチェーンの問題などのマクロ経済要因、規制政策や政府介入からの負の影響などの主たる要因によって煽られている。
ハーシュは企業が準備しなければならない、あるいは「今行動を起こすことを活性化原則として行動すべき」という直近、中期的そして将来的な脅威が存在すると考えている。当面、企業はリスクと機会がどこにあるかを判断するために、すでに必要とされている資源とスキルを活用すべきである。「企業は、どのように事業を運営するかを検討し、コストを削減し、資源の無駄をなくし、改善を生み出すことができるかを迅速かつ容易に行うために、どのように変革するかを検討する必要がある」という。「重要なことは、既存の資源をより効率的かつ効果的に活用し、より賢明な意思決定を長期的に支援することである。」
中期的には、企業は今後数年間にどのような変化が起こるのかを検討し、それらが事業に与える影響を評価し、必要に応じて対応し、ポジションを再構築するために準備する必要がある。特に、企業は方向性に関するエネルギー供給と価格設定と顧客行動という、2つの重要な中期的傾向に関してレーダーを張っておくべきである。「ウクライナ侵攻は、特に、影響を受けやすい欧州企業が、エネルギー供給の低下とエネルギーコストの上昇、さらにはサプライチェーンと生産サイクルの混乱をもたらす可能性があることを明らかにしている」と、ハーシュはいう。「他方、企業はパンデミックによって、顧客が自分たちのニーズに合わせて自らの優先順位をどの程度迅速に切り替えることができるかが明らかになったことを記憶している必要がある」という。
また、影響を受けやすい企業は、事業が現在どのように運営されているかについて、長期的な存続可能性を検討しなければならない。「組織は、活動するために多くの物理的な場所を必要とするだろうか。AIと新興技術は製品の設計とサービス提供を変えるだろうか。企業は中国や他の低コスト国からエレクトロニクスやマイクロチップなどの主要部品を調達し続けるだろうか。いずれ、より良いシナリオ・プランニングの必要性が高まることは明らかだ」という。
こうした変化に対処するためには、企業は長期戦略を実行し、定期的に、理想的には四半期ごとに見直す必要がある。ハーシュはいう。「企業はまた、成功を挫けさせるものは何かを検討すべきである」。それには、事業が潜在的に急激な市場の変化に適応するための適切な資本量を有しているかどうか、また、迅速に方向を変えるための適切な機構、IT能力、人材を有しているかどうかを検証することが含まれている。
柔軟性の重要性
多くの企業にとって、存続は状況によって転換が必要となるときの能力において中核的なものになるかもしれない。しかし、多くの企業がそうした不測の事態に備える方法は、未知の事態に対処するためのビルトインされた能力ではなく、そのような不測の事態に対処するための出来合いの、規範的な行動計画が準備されていることを、しばしば意味している。
「多くの組織、特に大規模な組織では、安定性と監督を維持するために設計された政策システムをコード化する傾向がある」と、英国ロービジネススクールのリーダーシップ部門のトップ、エリザベス・ムーア博士はいう。「残念ながら、しばしば起こることは、組織が自らのルールやシステムによって縛られてしまうことであり、それではもはや目的に適さないことになる。事業では、不確実性に対処することで安定性を維持する必要がある。そのためには、硬直性ではなく、変化を可能にする柔軟な内部システムを創造しなければならない。」
リスクをチャンスへとうまく利用するためには、組織は「激動の瞬間にどこにギャップが生じたかを見極め、そのギャップを利用するための戦略を検討しなければならない」とムーアはいう。しかし、新たな事態に効果的に対応し、バランスさせて進路を維持することは難しい。
「このような状況で最も良好な結果をもたらす企業は、柔軟で強靱なインフラを備えた企業、最悪のシナリオに備えた危機管理計画を作成した企業、さまざまなレベルの経営陣を通して前向きで透明性のある関係を構築した企業である」と、ムーアはいう。「危機が発生したとき、そしてしそうになったときこそ、組織全体の多様な個人が主体的に解決策を見出し、新たな機会を見つけるために協力しようとする意欲は、組織の成功につながる不可欠な基盤となる。」
金融サービスやテクノロジー業界のような一部の業界は、他の業界よりも混乱や大きな変化に備えることができているかもしれない。なぜなら、特にこれらの業界の幹部は、自社の商品の限られた時間枠と魅力を「深く認識している」からである。こうした認識によって、「自社の組織は破産まで6カ月しかないと考えるようになっている」と、リスク・テクノロジー・ベンダーのコンフルエンス社のアナリティクス・ビジネス担当取締役ダミアン・ハンジーは、述べた。
ハンジーは「現在のように存続期間が10年あると考えているとしたら、金融サービス会社は生き残れない」という。「この業界は競争が激しく、新たな破壊者が登場しやすいため、事業を継続したい多くの企業は、3年以内に戦略を見直し、変革する必要があると考えている。」
また、金融サービス業界は、主要なサービス分野のリスクマネジメントに取り組むことに挑戦する優秀な人材を引きつけ、彼らに多額の報酬パッケージを提供することに一貫して努力してきたことによって、混乱に対する準備ができているのかもしれない。。
「1990年代以降、金融サービス業界は組織のリスクだけでなく、新製品、複雑な商品、新たなトレンドに関連するリスクを評価するために、数字やデータ分析に優れた学界や他の業界の優秀な人材を求めてきた」と彼はいう。「そして、他のどこでも得られないほど、はるかに多くの金を払ってきた。これらの機関は失敗を免れるものではないが、業界全体として生存のために何をすべきかを認識し、時代遅れにならないように必要な措置を認識することに長けてきた。」
より良いリスク知能により意思決定を改善する
多くの専門家は、産業部門に関わりなく、すべての事業変革を支えるある種の意思決定を可能にするためには、より良いデータ収集と解釈が不可欠であると考えている。2008年の金融危機以降、さまざまな業界の企業は、リスクが発生した際にリスクを軽減するためにコントロールが効くようように重点を置いてきた。しかし、リスクマネジメントの枠組みを改善するための調整された一貫した全体的取り組みとしてではなく、むしろパッチワーク方式でこれを行ってきた。
その結果,ITベンダーのエイシン社リスク情報調査部門トップ、ルーパル・パテルは、企業が意思決定に影響するリスクと業務データの流れを遅くする統制の二重化によって、独自の業務リスクを生み出しているという。
「事業に対するリスクと活用可能な機会を理解するためには、データを端から端まで見る必要がある」と、彼女はいう。「リスクマネジャーはデータの質が維持され、データへのアクセスが容易で最新情報であることを確保することに経営陣をより多く関与させるために、『トップからの声』が伝わる良い文化を推進する必要がある」。
また、企業は事業に対する非財務リスクの潜在的なリスクの重要性を理解できず、財務リスクと同じように扱うことをしないことによって、自らのリスクにさらしている。
「非財務リスクは財務リスクに影響を及ぼしているにもかかわらず、非財務リスクは取締役会ではほとんど議論されていない」と、エイシン社の業務および気候リスクの専門家、ダミアン・ホスキンスはいう。「経営者にとっては、それまでの人生で数字を見るように言われ続けてきたため、非財務リスクよりも、市場リスクや信用リスクについて話し合うほうがずっと楽である。リスクマネジャーは、経営者が将来の事業戦略をより適切かつ効果的に決定できるように、両方のリスクについてより幅広い議論を継続するように促し続ける必要がある」という。
ビジネス・インテリジェンス会社のダン&ブラッドストリート社取締役社長エドガー・ランドールによると、企業はより効果的な経営意思決定を促進するために、リアルタイムの情報にアクセスする必要があるという。しかし、多くの企業は新規参入企業に比べて、すでに不利な立場に置かれている。「破壊的企業は、通常は小規模で最新の技術を駆使して、いくつかの中核分野に集中しているが、これを非常に容易に行って、市場シェアを獲得するためにデータを非常に積極的に活用している」という。「一方、伝統的なプレーヤーは、データの革新やより賢明な利用を妨げるレガシーITシステムを持っているため、苦しむ傾向にある。これらの企業は膨大なデータを持っているが、何もできていない。」
リスクの専門家は意思決定プロセスを改善し、経営陣が中核となる事業リスクに焦点を当てることができるようにすべきである。ランドールによれば、「金融サービス部門を見れば、毎日大量の自動化された意思決定が行われる」とランドールは言う。「他の業界の企業も追従する必要がある。リスクマネジャーは、『低リスク』業務に対しては、より自動化された意思決定を推し進めるべきである。そうすれば、管理時間は、より戦略的な課題を知らせるために、より良い情報を得ることに集中することになる」。
インスティテュート・オブ・アナリティックス社教育担当取締役クレア・ウォルッシュ博士によれば、データ分析は、あらゆるビジネスのリスクと機会を理解するために、「極めて重要」である。しかし、効果的な分析は、データの質に依存し、適切な分析ツールを用いて適切な行動をとることである。
「不備があり、不完全で不正確なデータを使用すると、明らかに結果を歪めることになる。一方、エクセルのような基本的でエラーを起こしやすいツールに頼ると、質の悪い結果によって不適切な意思決定につながる」という。しかし、たとえデータの質が良く、適切なツールが使われていたとしても、経営幹部が自分の持っている情報に基づいて行動しなければ、全体的な行動は無意味になる。最高データ責任者やリスクマネジャーが、CEOに対してデータが実際に何を意味しているのか、また、戦略を伝えるためにどのような洞察を得ることができるのかについて説得することは、依然として難しい課題である」という。
リスクマネジャーはデータ分析が将来の戦略に対して情報を提供し、事業運営に対してより強靭さを持たせるのに役立つことを経営者に示すためには、さらに多くのことを行う必要がある。それは、改善されたデータ・フローとより多くの情報に基づいた分析の結果として、組織がどれくらいの利益を得ているかを示すために、明確な測定基準を用いることによって達成することができる。ウォルシュはリスクマネジャーが「2年ではなく2カ月後に業績を上げるような、迅速かつ容易な勝利を追求すべきである」という。
例えば、データ分析によって小売業者に対する不十分な苦情処理が顧客維持率の低下をもたらしていることが明らかになるかもしれない。その結果、企業を批判する電子メールやソーシャルメディアの投稿を優先的に対処するように、顧客サービスチームに送信することで、苦情に迅速に対応できるようになる。データ・アナリストやリスクマネジャーは、売上の増加、顧客維持率、苦情処理のスピード、返金の減少、苦情件数の減少を実証し、財務への影響を示すことができる。
マクドウェルは、結局、リスクマネジャーが果たすことのできる重要な貢献のひとつは、経営者が長期戦略に集中できるように、「日々の」リスク業務をより多く遂行し、より適切にリスク報告に優先順位をつけることであると考えている。「ここ数年、取締役会は長期的な視点ではなく、日々の火消しに多忙であった」という。その結果、リスクマネジャーは、これからはより事前準備的に行動する必要がある。CEOが自由な時間を使え、戦略に集中できるように、規制リスクやインフレ関連リスクなど、より小さく一時的なリスクを管理する方法については、より要請を強化することが必要となるだろう。」
優秀人材および人員に関するリスクを考慮する
技術は明らかに重要であるが、企業が存続を望むならば、人材も考慮に入れる必要がある。行動科学コンサルタント会社ビヘイビア社のイノベーションおよび戦略担当取締役アレクサンドル・ドブラ・キールは、「従業員は技術と同程度に変化を促進する」という。企業が適応しようとする場合、プロセスが必要であり、有益で、達成可能であることを、あらゆるレベルのスタッフに納得させ、企業がどのように進めようとしているかについて透明性を持たせる必要がある。「将来の計画と、そこに到達するために取るべき措置を示すシナリオが必要である」という。「また、リスクはあるが、利益がそれを上回ることを明確にする必要がある。」
また、現在のスタッフやリーダーシップ・チームが、変革を行うスキルと専門知識を持っているかどうかについても判断する必要がある。ドブラ・キールは、「組織内のすべての人が、変化の要求に応えることができるわけではないし、他の人がそれに恐れを抱くかもしれない。そのため、人財の採用・保持戦略が非常に重要になる」という。
しかし、彼女は困難な課題を軽減すると思われる、「強気」な態度の人物を雇うことには警告を発している。「変化は、無謀を意味するわけではない。計画を立て、うまく実行しなければならない」という。多くの企業は、劇的な変化を遂行するのは、熱心な若年労働者を雇用するのと同様に単純なことだと考えている。しかし、それはお勧めできる戦略ではない。「野心的で、自信に満ち、攻撃的で、挑戦的な若い人々の新しい血を呼び込むことが、すべてのシナリオで必ずしも最善の答えになるとは限らない」と、彼女はいう。「また、そうした社員は会社の文化を理解していないため、組織が必要としている既存の主要スタッフと衝突する可能性もある。」
利害関係者との関係を改善する
過去数年間の世界的な経済的・地政学的変化は、長年にわたって確立されてきたビジネスモデルが中核まで揺さぶられ、顧客の行動がどの程度急速に変化するか、そしてそれに応じて企業が適応させざるを得ないことなることを示している。
前進するためには、企業の存続は、より広範な利害関係者とより良く深い関係を築いていくことに依存する。「CEOは自社の利害関係者が長期的にどのようなことを期待しているのか、また、自社の戦略と目標をどのように達成するのかを知る必要がある」と、マクドウェルはいう。気候リスク、持続可能性、倫理などの問題を考慮し、信頼を醸成するためには、企業は自社の価値提案を注意深く説明する必要がある。彼らの関心に耳を傾けず、無視すれば、他の事業に簡単に目を向けてしまう主要な利害関係者グループを疎外することで、リスクに直面する。」
トピックス
災害準備、新興リスク、全社的リスクマネジメント、リスク評価、リスクマネジメント、戦略的リスクマネジメント、サプライチェーン、技術
注意事項:本翻訳は“Is Your Business Future-Proof? ”, Risk Management, September-October 2023, pp.24-29 をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
ニール・ホッジは英国を拠点とするフリー・ジャーナリスト兼写真家。
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