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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

【Web特別版】『Risk Management』21年 9月号
2021-10-28

Risk Management

【Web特別版】

9月号

9月号web特別版表紙
INDEX

グレイスワン・イベントに備える

ジェイソン・ディズボロ、デボラ・プリティ博士

リスク管理専門家は財務リスクや名声リスクを予測し、評価し、組織をどれほどうまく守ることができるかによって、成功の程度が測定される。ロングテール・リスクとして知られているが、それが全く起こりそうもないと信じられているグレイスワン・イベントが、このミッションを複雑なものにしている。

しばしば、組織はこうしたイベントが起こりそうにないと確信しているので、これを予防するために資源を配分することを避けている。エーオンとアンド・ペントランド・アナリティックスの両社による名声リスク報告書の『グレイスワンを尊重する』は、グレイスワンの危機が名声と株主価値に与える忘れがたい影響を強調している。その報告書では、300件の企業の名声リスクを分析して、それはすべての主要産業セクターを網羅している。40年間にわたって分析されたリスクのうち10%以上で、株主価値の50%以上がグレイスワン・イベント後の1年以内に失われている。

 

財務的影響

40年間にわたる研究では、名声リスクによって1兆2,000億ドルの株主価値が失われていることが明らかになった。名声リスクが起きると、イベント後の1年間のある時点で、株主は平均26%の価値を失う。分析された名声リスクのうち、36%はガバナンスの失敗やビジネス慣行の不備に直接起因するもので、株主価値を最も損なうものである。

予期せぬ将来のリスクに備えるために、リスク管理者は何をすることができるであろうか。その答えは、4つの主要な分野に要約されている。すなわち、復元力の育成、リスクの状況の再考、影響の深刻さの認識、そして理解を行動に移すことである。

 

 

復元力を育成する

組織の資源は限られているが、リスク管理者はより可能性の高いリスクに備える一方で、グレイスワンに対しての防御とのバランスを取る必要がある。しかし、報告書が示すように、グレイスワン・イベントを無視することは、企業の名声と財務的健全性を著しく脅かす可能性がある。

 

復元力の文化を持つ組織は突発的なショックによって頓挫する可能性が低く、また、一回限りの訓練ではなく継続的な努力として復元力を受け止めているリスク管理専門家は、リスク管理を成功させる可能性が高い。また、復元力を構築することは世界が相互に結びつきを強め、リスクがより深刻になるにつれて、企業が取り組むべき重要な分野となっている。

復元力を構築する最善の方法は、損失の防止と軽減に強いコミットメントを持つことである。組織はコンティンジェンシー・プランを適切に策定しておく必要がある。そうすればグレイスワン・イベントが発生した場合には、対応する準備ができるし、危機を効果的に管理することができる。ある組織にとっては、それは特定のタイプの危機が起こったときに備えて強固な応計画を開発することを意味する。また組織のリーダーがどのように対応するかを知ることができるように、マッスルメモリーを構築するのに役立つシミュレーション訓練を実施することを意味する組織もある。組織、産業、そして準備すべき危機の種類に依存して、十分に備えるためには多様な行動が必要となる。


 

リスクの状況を再考する

COVID-19のパンデミック以前には、多くのリスク管理者はパンデミックが起こりうることを知っていたが、その可能性は十分な準備や投資を必要とするほど大きくはないと想定していた。グレイスワン・イベントに最もうまく対処する組織は時間と労力を割いて、事前にあらゆる所与の状況の可能性と深刻さを十分に把握している。

多くの組織は10〜15年前に策定された危機リストを持っているが、場合によっては、見直しや更新がほとんど行われていないことがある。とりわけテクノロジーやサイバー・セキュリティーなどの分野では、リスクが絶えず変化しているので、リスク管理者はリスクの状況を少なくとも年1回評価し、常に新しい要素を考慮していることを確認する必要がある。彼らは、世界的なリスクの動向を正確に把握するために、危機専門の組織や団体のようなコミュニティと関わっているべきである。これらのコミュニティでは、他の組織がグレイスワン・イベントに備えて何をしているかについて貴重な洞察を提供してくれるからである。

 

影響の深刻さを認識する

リスク管理専門家は先を見越した考え方と準備の重要性を理解しているが、組織内の組織リーダーたちが常にこの考え方を共有しているとは限らない。リスク管理者はトップからのコミットメントとサポートを必要としているが、グレイスワン・イベントの潜在的影響の深刻さを強調するのはリスク管理者の仕事である。グレイスワン・イベントの平均的な影響は、1兆2,000億ドルの株主価値の損失に相当する、マイナス8%の株価変動であった。この種のデータは、組織リーダーがグレイスワン・イベントがいかに有害であるかを理解し、認識するのに役立つし、それによって、リスク管理者が必要な復元計画策定に適切な時間と資源を投入するのに役立つ。

 

理解を行動に移す

強いリーダーシップを備えた迅速な企業は、災害が発生した場合、自らの資源のうまく再編をすることができる。 リスク管理者は危機対応計画を策定するにあたり、以下の3つの重要な項目を優先させるべきである。

  1. 強力で目に見えるリーダーを登用する: 危機がパンデミックのような世界的な災害であろうと、個々の組織の名声の危機であろうと、企業は強力なリーダーを持つ必要がある。説明責任を果たし、状況を統制できる人物を組織の顔とすることは、人間的な要素を追加し、反発や最悪の事態の回避に役立つ。
  2. 時宜を得たコミュニケーションを確保する: 組織のコミュニケーションチームは、迅速、正確かつ一貫したメッセージを提供すべきである。時には、事実に基づく情報をできるだけ早く入手することが、不透明に見えるものを待っていて、危険を冒すことよりも重要な場合がある。
  3. 行動志向のアプローチをとる: 組織は、以下のことについて答えることができなければならない。つまり、状況をどのように管理しているか。このような事態を未然に防止するために、どのような取り組みを行っているか。インシデントが生じたときに、どのようなコミットメントを取るのか。

 組織はグレイスワン・イベントを無視したり、準備を先延ばしにしたりする余裕はない。リスク管理者は、パンデミックのような想定外のイベントに備えていなかったことを経験した。彼らは危機に先だって、資源を投入することの重要性を組織に理解させなければならない。

 

トピックス

COVID-19 災害対策 緊急復旧リスク 財務リスク管理 パンデミック リスク管理 風評リスク リスク評価 リスク管理



注意事項:
本翻訳は“Preparing for Grey Swan Events”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article//2021/09/30/preparing-for-grey-swan-events),September, 2021,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

ジェイソン・ディズボロはエーオン社の多国籍企業(国際)クライアント担当最高経営責任者(CEO)。デボラ・プリティ博士はペントランド・アナリティック社創業者。

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