Edit

Payment Support

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

【Web特別版】『Risk Management』21年 11月号
2022-01-14

Risk Management

【Web特別版】

11月号

web特別版2021年11月
INDEX

高リスクで回復困難な脅威に取り組む

ルー・アン・レイトン

企業がどのようにリスクのバランスをとるかを十分に理解するためには、2つの重要な要素を検討する必要がある。1つはリスク認識、すなわち、特定のリスクの影響について企業の幹部がどれだけ懸念しているかである。もう1つは、リスクへの備え、すなわち、リスクに対処し、軽減しようとする取り組みにどの程度自信を持っているかである。

これら2つの要因は、一般的に整合している。われわれは、通常、心配事に備えようとするが、常に備えができているわけではない。英保険会社ビーズリーは、「新しい世界と新しいリスク:企業のリスクと回復力はどのように変化しているか」と題する最近の研究で、企業がリスクを認識しながらそのリスクへの備えができていない広範な領域があることを明確にした。

こうしたリスクに対する備えのない領域について、損失が発生する前と後に保険業界が企業を支援し、立ち直る力を向上させるために、革新的なソリューションを打ち出せる機会があることは明らかである。

高リスク・低回復力の脅威

この調査では、コロナ禍がリスク認識をどのように変化させたかを明らかにするために、企業幹部に、4つの広範なカテゴリー、すなわちテクノロジー、ビジネス、環境、政治・経済の中で、最も懸念するリスクを特定するよう求めた。

また、複雑に絡み合ったリスクがはびこる世界で、企業が回復力を向上させるためにどのような取り組みを行っているかを明確にするために、リスクを予測し対応する能力といったリスクに対する企業の回復力を評価するよう求めた。

全体として、この4つのカテゴリーには、リスクが高く回復が難しい上、明らかにいくつかの盲点がある。この一連のリスクには、サプライチェーン、事業中断、役員のリスクが含まれる。テクノロジーのリスクにおいては、存亡を脅かすリスク(イノベーションの失敗、新たな変化への対応への後れ、競争における敗北、顧客の需要または市場の変化への対応の失敗など)のみが、高リスク、低回復力の象限に位置づけられている。

気候変動と環境破壊は、環境リスクのカテゴリーで最も懸念されるリスクである上に回復が難しく、企業の幹部が夜眠れないほどの政治的・経済的リスクは、政治的リスクと立法や規制のリスクであった。

検討された不適合

サプライチェーンは、企業幹部にとって最もリスクと回復力の間の不適合が懸念されるカテゴリーである。昨年のサプライチェーン・リスクの急激な高まりは、企業にこの課題の重大さとそれに対する準備不足を認識させた。この領域は、保険会社が新たなリスク軽減策を考案する機会を提供するが、そのリスクは複雑である。サプライチェーンのさまざまな側面に対する補償はあるが、「パッケージ化された」商品ではないため、保険契約を結ぶためには複雑な交渉が必要である。そうしたサプライチェーン・リスクについて最も懸念を表明しているのは、製造業、エネルギー、公益事業、小売業である。また、海運業や倉庫業も、並々ならぬ懸念を抱いている。

事業中断は、リスクランキングでは少し下に位置するが、回復が難しく、このリスクに対処して「準備が万全だ」との回答はわずか41%であった。コロナ禍は想定外の事業中断のコストを浮き彫りにし、企業は今、将来の想定外の事業中断リスクへの備えを強化している。ここは、急激な革新を遂げている保険の分野であり、外出機会の減少による経済的損失のための様々なパラメトリック保険が導入された。この保険では、あらかじめ決めておいた災害条件に該当すれば、損害状況の調査を行わずに即座に保険金が支払われる。言うまでもないが、旅行・宿泊業などホスピタリティ業界とレジャー業界がこのリスクに最も懸念を持っている。

コロナ禍のため、役員のリスク、特に立法上・規制上のリスクはすべて精査の対象となっている。これには取引の時期と場所、顧客とのやり取りの方法、雇用契約の扱い、報告や説明責任などビジネスのあらゆる側面が含まれる。ESG(環境・社会・ガバナンス)の重視と気候変動に関する報告の増加傾向もあり、企業幹部が規制リスクを懸念するのは不思議ではない。規制リスクは、取締役や役員らの役割に影響を与える新たな重要な要因として急浮上してきた。

パンデミック後の景気後退や世界的な保護主義の拡大に伴う社会不安に対する懸念から、政治的リスクが増大している。英国や米国の企業は特に、政治的リスクに対して回復力があるとは感じていない。このリスクに対し「準備が万全だ」と答えた回答者は39%にすぎない。しかし、このカテゴリーの脅威を予測し、管理できると確信している米国の企業幹部の割合は、英国より10%以上高い。これは、立法や規制の現状を変えることに後ろ向きなバイデン政権への移行したことを反映しているとみられる。

気候変動は、3種類のリスク―物理的リスク、移行期リスク、責任リスク―を含み、世評リスクと潜在的な役員のリスクの原因として意識されている。保険業界は、CO2排出量を管理する明確な計画を持たない企業に対して、保険契約の引受の方針、保険による保護の撤回または制限を通じ、変化を促すように規制当局からの強い圧力にさらされている。多くの業界では、このリスクの増大に対し全く準備が追い付いていない。

ビーズリーは、環境被害とは、企業に起因するか企業に打撃を与える環境破壊、生物多様性への打撃、汚染を防止または管理することができないことであると定義している。明白で即座に脅威をもたらすテクノロジーのリスクとは対照的に、環境リスクは差し迫ったものではなく、影響を与えることがはるかに困難であると認識されている。環境に関する懸念は、環境基準や報告書に関する規制の強化に対応できないという、より短期的な脅威に実質的に置き換えられる可能性もある。

破壊的リスクとは、企業が特に対処ができていないと感じるテクノロジー上の脅威であり、その管理に「準備が万全」と感じていると回答した企業はわずか40%であった。

破壊的リスクはその性質上、予測が困難である。それは現状に変革を迫り、バリューチェーンを再構築させる。より鮮明なビジョンや資金力を持った他の競合に追い越されてしまった場合には特に、企業が認識し対応することが困難となる。

ズレに対処する

保険はリスクの万能薬ではない。リスクの認識と備えの不適合を調べることによって、保険の機能の改善と革新が最も必要とされる領域を知ることができる。企業はリスクが高く、回復が難しい脅威を優先すべきである。なぜなら、リスク軽減での解決策があまり明確でなく、したがって損失の可能性が大きいからである。これらは、事業者にとって保険が最も必要とされる分野であり、したがって、リスク管理者が保険会社に革新を求めたい分野である。

また、企業が予見し保険によって備えることができるリスク(取締役会のリスク、雇用主の責任、事業中断など)と、より広範な経済リスク、気候変動、サプライチェーン、目端が効く競合他社による事業中断や混乱などを予見・補償することが困難なリスクとの間での葛藤が高まることも避けられないようである。

リスク状況の複雑さはともかく、ビーズリーの調査は、保険会社が保険契約者とより効果的に連携する必要性を明確に指摘している。リスク管理者は、保険会社に次の3つを期待すべきである。

・ 業界別・規模別リスクへの深い理解
・ 保険契約に専門家によるリスク相談サービスを盛り込むこと
・ 包括的で分かりやすい補償範囲

保険会社の役割は、保険金請求が発生したときに金銭的な補償を提供することだけではない。ブローカーやクライアントと協力して、業界に関する深い知識とリスク動向に関する理解を深め、複雑で絡み合ったリスクを適切に管理する上で役立つ洞察と、損失前のリスク管理に関するサービスを提供することは、保険会社が最も影響力を発揮できる領域である。リスク管理者は、保険会社にこのような要求をすることをためらうべきではなく、契約更新時だけではなく、教育や革新が常に重要であることを認識している保険会社を探すべきである。

トピックス
事業中断、気候変動、経済、環境リスク、保険、コロナ禍、政治リスク、リスク評価、リスク管理、サプライチェーン、技術


本翻訳は“Addressing High-Risk, Low-Resilience Threats”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2021/11/29/addressing-high-risk-low-resilience-threats),November, 2021,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

ルー・アン・レイトンは、英保険会社ビーズリーのブローカー・リレーションズ&マーケティング部門グローバル責任者。

記事の詳細を読む

会員の方

非会員の方

SHARE

RIMS日本支部

アプリケーションパスワードを使用すると、実際のパスワードを入力しなくても XML-RPC や REST API などの非対話型システムを介した認証が可能になります。アプリケーションパスワードは簡単に取り消すことができます。サイトへの従来のログインには使用できません。