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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

『Risk Management』23年3-4月号
2023-04-27

Risk Management

3-4月号

INDEX

バックアップ計画 : 従業員離職時の組織知の保存法

トレバー・トレハーン[*]


「大量離職」と「高齢化の津波」は、企業に大きな影響を与える2つの労働力にかかわる動向として、近年大きな注目を集めている。急速に高齢化が進む中で、われわれは、「大量離職」の真只中にあるという労働の専門家もいる。ピュー・リサーチ・センターによれば、団塊世代の退職率は、COVID-19以降加速傾向にある。団塊世代の2,900万人近くが2020年に退職しているが、その数は2019年より300万人増えている。また、2030年までに合計7,500万人が退職するとされる。

さらに、多くの従業員が、離職は有意な昇給を獲得し、ふさわしい賃金を得るための唯一の方法であると認識している。ピュー・リサーチ・センターの分析によれば、2022年7月から転職した従業員の半数は、給与が10%近く増加したのに対して、転職せずに企業に残った労働者の給与の中央値は、インフレ調整後で2%近い損失となっていた。ストレス、燃え尽き症候群、組織文化の問題、人員不足、インフレ率の上昇、景気後退の見通し、その他の労働条件に影響を与える問題と組み合わせてみると、ほとんどの人々が離職を望んでいるか、あるいは少なくとも離職することに前向きであることは明らかである。事実、ランスタッド・エンプロイヤ−・ブランド・リサーチによると、全労働者の70%が新しい雇用機会に前向きであることが明らかになっている。

退職するにしても、新たなチャンスのために転職するにしても、離職する労働者は、職業上のキャリアを通じて蓄積してきた専門知識や組織の知を持ち出すことになる。スティーブ・トラウトマン社の創設者でもある人材リスクマネジメント・知識移転の専門家であるスティーブ・トラウトマンはいう。「彼らが残したものは、人間関係、物事がどのように成し遂げられるかの知識、技術的な専門知識、さらには製品の提供、顧客管理、市場で起きていることに関する専門知識など、あらゆる側面のものである。」

このような経験豊富で知識豊富な人材の流出は、「頭脳流出」をもたらす。時には「人的資本流出」として知られる頭脳流出は、大きく3つの形態に分類される。優秀な従業員が退職し競合他社に移る場合、高度な技能を持った個人や卒業生が母国や地域を離れる場合、ある部門から別の部門に異動する場合など、組織的なものである。これら3つの形態はいずれも、特に経験豊富な社員や「業績優秀な」社員が退職する場合には、組織の成功と存続に脅威を与えることになる。こうして熟練した人材を失うことは生産性に影響を与える可能性があり、後任を見つけるためのその後の採用努力にはコストがかかる。

リスクマネジメントにおける頭脳流出

高度な技術、能力、経験を必要とする専門分野であるリスクマネジメントは、特に頭脳流出による悪影響を受けやすい。リスクマネジメントは、単独の部門だけで独自に運営される仕事(ナレッジ・サイロ)が多く、リスクマネジメントの専門家がいなくなると、彼らの影響力や知識も失われることになる。

リスクマネジメントの専門家は、重要な知識や理解力を有している。「この種の知識資本、知的資本、そして関係資本さえ、報告書やチェックリストの一部といった形式的なものではない」と、レテンサ社のCEOで従業員定着化の専門家チェーソン・ヘクトはいう。それは、知的財産、顧客、従業員を巻き込んだシステムとともに発展してきたからである。リスクは画一的ではない。組織の利益と兆候は、より複雑になっている。それらの積み重ねられた層が、どのように互いに適合し、問題をどのように緩和するかについての理解は、容易には置き換えられない。」

頭脳流出対策の緊急戦略

重要な知識と専門知識を保持し、頭脳流出を止めるために、組織が短期間で実行できる戦略は数多くある。

「即刻実行可能な方法は、知識共有を企業の価値観や方針の一部にすることである」と、米国人材マネジメント協会ナレッジセンター・シニアディレクターのアンバー・クレイトンはいう。「これには、プロジェクトやタスクの開始前、期間中、完了後に、方針、手順、指示、グラフ、写真、ビデオなどの情報収集を指示することを含んでいる。模範を示すことは、すぐにでも始めることもできる。特定の製品、サービス、部署に関する情報を共有するためのランチタイム学習会の開催である」。

人材リスクを管理することは、定期的なチームの取り組みで行うこともできるし、そうすべきである。トラウトマンは、「マネジャーや技術職のリーダーは、独自の専門知識を持った人材を対象にチームを調査し、それぞれの専門家が何をしているときに独自の専門知識を持っているのか、正確にラベル付けするよう努めるべきである」という。「タスク・レベルで考える。彼らは何をするのか。彼らはどのような問題を解決するのか。どのように人間関係を管理しているのか。そのとき、マネジャーは、ユニークな専門家とともに学び、バックアップを提供する能力を持った人材とペアを組むことができる。」

従業員の定着を促すもう1つの方法は、他のチームメンバーや組織ミッションとつながっているという感覚、リーダーからの感謝の気持ち、実行されている仕事の成果への関与を育むことである。ヘクトは、「会議のマネジャーとして、『どうすればよいと思うか』と問いかけることで、アイデアの相互提供が可能になり、知識の共有が進展する」という。プロジェクト後に「学んだ教訓」会議を標準化して、「何がうまくいったか。何がうまくいかなかったのか。無限の時間と予算であれば何を変えるのか。誰が、なぜ、評価されるべきなのか。」といった質問をすべきである。

また、臨時のボーナスは、従業員の定着率や士気に即座に影響する。人並み以上の働きをした従業員を表彰し、少額の現金によるボーナスや有給休暇の割増によって、その従業員を認めるチャンスを探すべきである。ボーナスと行動を明確に結びつけるために、できるだけ努力がなされた時に近いかたちで支給するようにするのである。

従業員の中には、留まるか退職するかの決断が、詰まるところエンゲージメントの問題になる可能性もある。ヒアリング・オーストラリア社のリスク・コンプライアンス担当責任者アンドリュー・メスベンは、「従業員の能力開発、支援、育成に失敗すれば、彼らはうんざりして転職するだろう」という。「彼らがうんざりして組織に残っていても、組織の成果を支えるエンゲージメントとエネルギーを失うことになるので、(むしろ)悪いかもしれない」。

メスベンは、組織全体に対する従業員による協力の機会を増やすために、「リスク・チャンピオン」ネットワークを構築することを提案する。「正式に創設された大規模リスクチームが存在しない場合には、特にこれは有効である」という。「例えば、私のチームには3人のスタッフがいる。しかし、われわれは、臨床、サイバーセキュリティ、健康と福祉、そして、それぞれの分野では、リスクマネジメントの専門家の別のチームと協力している。優秀な人材を確保するためには、彼らが成長する方法や求めている機会を理解するために、一緒に時間をつぎ込むことが必要である」。

長期的アプローチ

また、離職による知識の遺失を防ぐためには、長期的な視野を持って定着に向けた取り組みを行うことも必要である。

「企業は、誰かが休暇を取ったり、他の職位に異動したり、離職する前に、知識共有を確保する事前の対策を講じる必要がある」とクレイトンは言う。「従業員を知り、退職するリスクの高い人を知るべきである。健康、家族、仕事の問題などの赤信号に注意すべきある。定年退職者のうち、早期退職を予定している者がいるかどうかも見極めなければならない。」

また、従業員が組織にとどまる理由や離職したい理由、従業員が本当に働きたい場所になるためには、どうすればよいのかといった理由を知るために、従業員との面談を実施することは有効であるかもしれない。

もちろん、離職は常に起きるし、組織と残った従業員の双方にとって、こうしたケースを円滑に処理するためにできることは多くある。そのためには、誰が何をするのかを把握し、職務記述書やその他の文書を通して従業員のスキルと知識を詳細に知っておくことが重要である。

クレイトンはいう。「指示や手順を把握するプロセスを開発し、従業員と部署のコミュニケーションを促し、従業員が共有しやすいように、アイデアや提言を認める」。「メンタリングやジョブ・シャドウイング・プログラムは、長年の経験者と経験の少ない者を組ませることによって知識の移転を促すが、ジョブ・ローテーションやクロストレーニングも、知識の共有を確保するための施策である。」

報酬は、特に現在の経済状況において、定着の重要な要素となっている。ピュー・センターの調査結果によれば、現在の給料にとどまってインフレによるコストを受け入れるか、あるいはなすべきことをなすことによって稼ぎを減らすかが選択肢であれば、退職を希望する人がいても驚くことではない。企業は、他社に負けない給与を出すために何ができるか、そして労働者が離職せずに居続けたい組織になれるかを、真剣に考えるべきである。

しかし、人材リスクを長期的に解消するには、給与だけでは不十分である。そのうち、「これは、私がもらっていたはずの給料——私が稼いだもの——だから、定着に余剰分は存在しない」とヘクトはいう。

また、企業は、従業員の意識、特に過去最高のストレスや燃え尽き症候群を考慮しながら、それらの問題に対処するための有意な措置を講じる必要がある。

柔軟性は、定着を高める上で考慮すべき事項の一つである。例えば、企業は、知識のある従業員を何らかの形で雇用し続けるために、従来とは異なる勤務形態やパートタイム労働の取り決めを検討したいと考えるかもしれない。「柔軟な仕事の仕組みはまもなく標準になる」とヘクトはいう。「現実になくなってはいないが、週40時間労働という考え方は消えつつある。柔軟な仕事の仕組みは、組織にとって次のフロンティアなのである。」

専門知識が他の従業員に確実に引き継がれるために、企業に「ナレッジ・サイロ」の一覧表を作成するよう推奨しているとトラウマンはいう。ナレッジ・サイロとは、誰かが一人で行ってきた仕事の固まりのことであり、学習するのに1年を要することかもしれない。その目的は、一人の従業員がいくつの「ナレッジ・サイロ」に責任を持っているのかを決めて、退職時に既存または後任の従業員に引き継ぐことである。

企業は、これらの「ナレッジ・サイロ」をできるだけ早期に明確にする必要がある。トラウトマンはいう。「従業員300人のリストを作成すれば、20〜30人の特に頼りにされている従業員が見つかるだろう。そして、その人を引き抜いたら、どの仕事がストップするのかを明確にするいくつかのシナリオを進めるためにスタートすることが出来る。」

人材リスク・アセスメントを実施することにより、企業は各従業員の「ナレッジ・サイロ」を理解することができる。このプロセスは、スタッフ定着アプローチとして活用することができる。トラウトマンはいう。「おそらく、15〜20の異なるナレッジ・サイロで業務を一人で行っている人がいるだろう」。「その人に多くのサイロで働いていることに満足しているかどうかを尋ねて、彼らが古くさい仕事に埋もれてイノベーションに目を向けていないことを知るかもしれない。あなたには、そうした仕事の塊から人々を積極的に引き抜いて、別の仕事をさせることが出来るかもしれない。このことは、人材採用担当者から電話がかかってきたとき、その人を組織に残ることを選択させる際には信じられないほど力強いものとなるものかもしれない」。

この一覧表を集めてナレッジ・サイロを理解することは、個人レベルでの慎重な検討が必要であり、全社的な調査では効果的には達成できない。トラウトマンはいう。「個人の行動を見なければならない」。「私たちは、現場のマネジャーに、社員が実際に毎日何をしているのかを尋ねることで、データを収集している。上級管理職の場合、その直属の部下は上司が何をしているかを知っているはずである。私たちは一人ひとりのエコシステムに着目している。彼らが何をしているのか、彼らがしていることに価値があるのかを知るために質問する。

頭脳流出との闘いは、すべての組織の長期的な人材リスクマネジメントの一環として取り組むべきものである。企業は、より効果的な知識移転戦略に取り組むことによって、個々の従業員が離職しても彼らの知識と専門知識を維持できる。

トピックス
新興リスク、全社的リスクマネジメント、人材、知的財産、プロジェクト管理、リスク評価、リスクマネジメント


注意事項:本翻訳は“Backup Plans: How to Preserve Institutional Knowledge as Employees Depart ”, Risk Management, , March-April,2023, pp. 22-25をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
トレバー・トレハーンは韓国を拠点とするフリーランス・ジャーナリスト。

災害対応における雇用主の責務

サリー・R・カレー[*]


竜巻、山火事、冬の嵐、ハリケーン、熱帯性暴風雨、洪水、地震、火山など、世界中のあらゆる地域で異常気象事象が発生する危険性がある。エーオン社は、2022年の自然災害による世界の経済損失は3130億ドルにのぼると推定している。国立海洋大気庁(NOAA)の環境情報センターによると、米国だけでも18件の大規模自然災害があり、昨年は少なくとも10億ドルの損害をもたらした。また、米国国勢調査局のデータによると、2022年に自然災害により、米国では推定340万人が家を離れざるを得なくなった。ほぼ40%が1週間以内に戻ることができたものの、16%近くは一度も戻っていない。

気候変動が異常気象事象をますます頻発させ、深刻化させる中、2023年にはそういうことは起きないと信じる根拠はない。雇用主が自然災害の発生を防ぐためにできることはほとんどない。しかし、自然災害が企業に与える影響に備えることは、従業員の安全を守り、災害が企業に与える経済的影響を軽減するのに役立つ。

緊急時行動計画を策定する

労働安全衛生局(OSHA)は、雇用主に対して安全で健康的な労働条件を提供することを求めており、これには自然災害やその他の緊急事態に起因する職場における不当な危険から従業員を保護することも含まれている。OSHAは、職場の緊急事態を自然または人為的な「労働者、顧客または公衆を脅かし、業務を中断または停止させ、物理的または環境的損害を引き起こす状況」と定義している。

災害が発生する前に、雇用主は緊急時行動計画を準備できるように、合理的に予見可能な緊急事態を特定すべきである。計画には、火災や洪水による避難の際に従うべき手順、竜巻または激しい嵐の際に使用するセーフルームの設置、異常気象で移動が危険な場合の在宅勤務規則などの情報を含めることができる。緊急時行動計画の策定およびその内容に関するガイダンスを作成する際の助けとして、雇用主はOSHAおよび米国労働省が提供する「職場の緊急事態及び避難のための計画の方法」(補足を参照)を検討すべきである。

*****

緊急時行動計画の不可欠な要素

組織が緊急事態や災害に備えるのを支援するために、労働安全衛生局(OSHA)と米国労働省は、「職場における緊急事態と避難の計画」を発行し、緊急時の行動計画を策定するための指針を提供している。 このパンフレットは、www.OSHA.gov “OSHA Publications” に掲載されている。

緊急時行動計画を策定する際には、まず危険性評価を行い、職場で何が緊急事態を引き起こすかを判断

することが重要である。計画は現場に合わせて作成されるべきであり、もしあなたが複数の現場を持っているならば、各現場は独自の緊急行動計画を持つべきである。

また、状況を評価し、対応と避難の取り組みを主導し、外部の緊急時対応サービスと連絡を取ることができる緊急時コーディネーターを特定することも役立つかもしれない。

最低限、緊急時行動計画には、以下を含めなければならない。

  • 緊急事態を報告し、従業員に避難や行動を促すための望ましい方法
  • 避難の方針と手順
  • フロアプラン、職場地図、安全・避難場所など、緊急脱出手順およびルート割り当て
  • 緊急時計画の下で、追加情報または職務と責任の説明を求める際に、貴社へ連絡を取
    るための社内外の個人の氏名、役職、部署、電話番号
  • 避難する前に、すべての緊急警報のために停止できない重要な作業を実施または停止し、

消火器活動を実施し、その他重要な業務をするために残る、従業員の手順

  • 労働者の救護および医療に関する業務を履行する従業員の配置

OSHAによって特別に要求されているわけではないが、以下を含めることも有益かもしれない。

  • 退避後の全従業員を確認するための、指定された集合場所と手順
  • 火災、爆発その他の緊急時に使用される代替的な通信センターの場所
  • 会計記録、法的文書、従業員緊急連絡先リスト、およびその他の必須記録の原本または

複写物を保管するための安全なオンサイトまたはオフサイトの場所

*****

緊急時行動計画が策定され、従業員に周知された後は、雇用主が全従業員に対して、その内容に関する十分な訓練を行うことが重要である。危機の際、適切な訓練を受け、緊急時訓練を受けた従業員であれば、計画を思い出し、それに従う可能性がはるかに高くなる。

従業員とコミュニケーションをとる

過酷な気象現象やその他の緊急事態の発生前、発生中、発生後のコミュニケーションは非常に重要であり、そのようなコミュニケーションのための計画は、緊急時行動計画に含まれるべきである。従業員は、緊急時に雇用主とのコミュニケーション方法、および緊急事態が発生した場合に必要な情報を入手する方法を知り、理解しなければならない。混乱の中では明確に考えることは難しいので、従業員は自分が何をすることが期待されているかを事前に知っておくことが重要である。

雇用主は、全従業員の最新の連絡先情報を維持し、それが定期的に更新されていることを確認する整備されたプロセスを持つべきである。一部の組織では、コミュニケーション・ツリーを導入し、数人の従業員がそれぞれのリストに電話をかけ、その従業員がまた別のリストに電話をかけるというように、全員が連絡を取り終えるまで繰り返すようにしている。また、録音されたメッセージやグループテキストを送信する技術を利用する雇用主もいる一方、従業員が保存しておき、緊急時に使用するコールイン番号を設定する雇用主もいる。雇用主がどのような手順を選択するにせよ、緊急時にその手順が守られ、全従業員に連絡が取れるよう、特定の役割を担う者を決めておくべきである。

従業員報酬の要件

公正労働基準法(FLSA)は、従業員の報酬に関する多くの規則を概説しており、雇用主はそれらを熟知しているべきである。特定の種類の企業や従業員にのみ適用される特定の規制があるかもしれないが、一般論として、災害時に従業員がどのようにして給与が支払われるかについては、従業員が厚生労働基準法の適用を免除または非免除に分類されるかによって決まる。

雇用主は、非免除従業員に対して、実際に働いた時間に対してのみ賃金を支払うことが義務付けられている。たとえ、働かなかった理由が自然災害やその他の緊急事態であり、従業員の責任ではない場合であったとしてもである。例えば、雇用主が自然災害に備えて職場を閉鎖し、従業員を帰宅させた場合、閉鎖後に実際に働いていない時間に対して、非免除従業員に給与を支払う義務はない。

しかし、待機時間や職場にいることが義務付けられている時間については、例外となる可能性がある。例えば、職場が停電しているにもかかわらず、停電が復旧した場合に備えて待機する必要がある場合や、週の労働時間が変動しても固定給を受け取る非免除の従業員の場合などである。また、保守要員や看護師が構内に滞在する必要がある場合には、たとえ作業をしなくても報酬を受けなければならない。

免除される従業員については、その週に労働があれば、雇用主はその週の給与を全額支払う義務がある。従って、自然災害やその他の緊急事態により職場が閉鎖された期間が1週間未満である場合、雇用主は免除された従業員の1週間分の全額給与を支払わなければならない。閉鎖が1週間続き、その期間中に免除従業員が全く仕事をしない場合、雇用主は報酬を支払う必要はない。

雇用主は、自然災害やその他の緊急事態のために従業員が働けない、または働かないことを選択した場合、有給休暇やその他の休暇を利用することを従業員に要求することができるが、この方針は事前に従業員に明確に伝えておくべきである。理想的には、これは全員に配布される従業員ハンドブックに記載されるべきである。

また、雇用主にとって、雇用者の給与と時間管理の記録を保護することも重要である。物理的な職場に壊滅的な被害が生じた場合、記録が失われ、雇用主が給与処理することが困難または不可能になる可能性がある。オリジナルの記録が利用できなくなった場合でも、容易にアクセスできるように、オフサイトの電子バックアップを維持することが望ましい。

公正労働基準法(FLSA)は、従業員の報酬に関する多くの規則を概説しており、雇用主はそれらを熟知しているべきである。特定の種類の企業や従業員にのみ適用される特定の規制があるかもしれないが、一般論として、災害時に従業員がどのようにして給与が支払われるかについては、従業員が厚生労働基準法の適用を免除または非免除に分類されるかによって決まる。

雇用主は、非免除従業員に対して、実際に働いた時間に対してのみ賃金を支払うことが義務付けられている。たとえ、働かなかった理由が自然災害やその他の緊急事態であり、従業員の責任ではない場合であったとしてもである。例えば、雇用主が自然災害に備えて職場を閉鎖し、従業員を帰宅させた場合、閉鎖後に実際に働いていない時間に対して、非免除従業員に給与を支払う義務はない。

しかし、待機時間や職場にいることが義務付けられている時間については、例外となる可能性がある。例えば、職場が停電しているにもかかわらず、停電が復旧した場合に備えて待機する必要がある場合や、週の労働時間が変動しても固定給を受け取る非免除の従業員の場合などである。また、保守要員や看護師が構内に滞在する必要がある場合には、たとえ作業をしなくても報酬を受けなければならない。

免除される従業員については、その週に労働があれば、雇用主はその週の給与を全額支払う義務がある。従って、自然災害やその他の緊急事態により職場が閉鎖された期間が1週間未満である場合、雇用主は免除された従業員の1週間分の全額給与を支払わなければならない。閉鎖が1週間続き、その期間中に免除従業員が全く仕事をしない場合、雇用主は報酬を支払う必要はない。

雇用主は、自然災害やその他の緊急事態のために従業員が働けない、または働かないことを選択した場合、有給休暇やその他の休暇を利用することを従業員に要求することができるが、この方針は事前に従業員に明確に伝えておくべきである。理想的には、これは全員に配布される従業員ハンドブックに記載されるべきである。

また、雇用主にとって、雇用者の給与と時間管理の記録を保護することも重要である。物理的な職場に壊滅的な被害が生じた場合、記録が失われ、雇用主が給与処理することが困難または不可能になる可能性がある。オリジナルの記録が利用できなくなった場合でも、容易にアクセスできるように、オフサイトの電子バックアップを維持することが望ましい。

休暇・宿泊施設・継続雇用の方針

自然災害の発生後、雇用主に対して休暇や宿泊施設に関する要求が増えることが予想される。雇用主は、極端な事態が発生した後の有給休暇の取得について、自社の方針に従うべきである。また、育児介護休業法(FMLA)は、従業員50人以上の雇用主に対し、身体的または精神的な疾病、怪我、障害などの深刻な健康状態に陥ったために仕事を遂行できない、あるいは深刻な健康状態にある配偶者や子供、親を介護しなければならない従業員に無給の休暇を与えるよう義務付けている。この要件は、自然災害の後にも適用される可能性がある。FMLA以外にも、雇用主に休暇を提供することを義務付ける州法や地方法が存在する場合がある。さらに、自然災害に起因する精神的または肉体的傷害は、米国障害者法に基づく宿泊施設の要請増加につながる可能性がある。

雇用主が随意雇用従業員に出勤を指示し、従業員が出勤を拒否した場合、休暇や宿泊施設を利用する法的な権利がある場合を除き、雇用の終了を含む懲戒処分の対象となる可能性がある。ただし、一部の地方法や州法では、強制避難命令を受けている従業員の保護を定めている。また、労働安全衛生法(OSHA)は、労働条件が安全でないという合理的で誠実な確証がある場合、従業員に労働を拒否する権利を与えている。さらに、州法は様々であるが、雇用主の故意または重大な過失によって従業員の傷害や死亡が引き起こされた場合、雇用主が(労災保険会社とは対照的に)従業員の就業中の傷害や死亡に責任を負う可能性があることに留意すべきである。

雇用主にとって重要なのは、災害が起こるまで待つのではなく、前もって計画を立てることである。よく練られた緊急時行動計画と明確な雇用対策は、従業員と雇用主を守り、緊急事態の間や、その後の混乱を最小限に抑え、緊急事態による操業停止後、できるだけ早く業務を復旧させるのに役立つのである。

トピックス
事業中断、コンプライアンス、危機管理、防災、災害復旧、従業員給付、健康・福利厚生、人事、安全


注意事項:本翻訳は“Employer Obligations in Disaster Response ”, Risk Management, , March-April,2023, pp.26-29  をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
サリー・R・カレーは弁護士事務所ランバーガーカークのパートナー。雇用と商業訴訟の分野で業務を行っている。

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