Risk Management
【Web特別版】
7月号

- 地政学的リスクとインフレが2025年のサプライチェーンにおける最大の懸念事項
地政学的リスクとインフレが2025年のサプライチェーンにおける最大の懸念事項
モーガン・オルーク(訳:鈴木英夫)[*]
WTW社の2025年グローバル・サプライチェーンリスク調査によると、サプライチェーンリスクを完全にコントロール出来ていると考えている企業は8%未満である。さらに、63%の企業が予想を上回るサプライチェーンリスク関連の損失を被っており、ますます不安定化するリスク環境に対応するために、企業はレジリエンス(回復力)と適応力を高める必要があることが窺われる。
実際、この調査によればサプライチェーンリスクへの懸念が過去2年間で変化している。回答者の半数以上(55%)が、2025年には地政学的要因を最大の懸念事項として挙げたが、2023年には35%に過ぎなかった。また、調達コストと輸送コストの上昇に伴うインフレについても、55%の企業がサプライチェーンリスクの増大要因として挙げている。(2023年では31%に過ぎなかった)。一方、パンデミックや、その他の健康関連要因を主要なリスク要因として挙げたのはわずか37%で、2年前の60%から大幅に減少した。
今後の見通しとして、回答者は、サイバーセキュリティ・規制変更・原材料不足が、今後2年間でサプライチェーンに最も大きな影響を与える要因であると指摘している。サプライチェーンリスクに対応するため、企業はサプライヤーや顧客との関係改善、データ品質の向上、データ共有の改善、そして社内外のステークホルダーを網羅するサイバーセキュリティ・プログラムの策定と実施にますます注力している。
トピック
事業中断、 国際リスクマネジメント、 サプライチェーン
注意事項:この記事は”Geopolitical Risk and Inflation Top Supply Chain Concerns in 2025”Morgan O’Rourke | June 24, 2025, Risk Management Site,(https://www.rmmagazine.com/articles/article/2025/06/24/geopolitical-risk-and-inflation-top-supply-chain-concerns-in-2025)
をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
モーガン・オルークは、リスク・保険マネジメント協会(RIMS)の「リスクマネジメント」編集長兼コンテンツ・出版担当シニアディレクター。
鈴木英夫はRIMS日本支部の主席研究員。
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