Edit

Payment Support

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

【Web特別版】『Risk Management』22年 10月号
2022-11-25

Risk Management

【Web特別版】

10月号

Web特別版9月号表紙
INDEX

【Web特別版】リスク専門家はAI導入での頭痛の種をどのようにして回避しうるか

デイヴィッド・ベニグソン[*]


 

リスク業界が10年前とはまったく異なるように見えると言うのは、あまりにも過小評価になるだろう。パンデミック以前から、リスク専門家は世界が相互に結びついたものになるにつれて、急速に進化する優先事項や責任に対処しなければならないことが増え続けていた。さらに、デジタル・トランスフォーメーションへの取り組みやサプライチェーンのボトルネックなど、パンデミック時代に起因する問題の波紋が加わり、すでに混沌としたリスク空間はさらに手に負えなくなってきていた。

リスクマネジメントの領域は複雑であるため、リスク専門家が回避、軽減、先取することはもちろんのこと、差し迫った脅威を検知することは非常に困難になっている。さらに、一部のリスクチームはデータに精通し始めてはいるものの、現在では大量の非構造化データが氾濫しているため、手作業によるデータの分析や処理は現実的ではない。このため、リスク業界関係者では、リスクインテリジェンスと名声管理からくる頭痛の種に対する可能なソリューションの一つとして、人工知能と自動化に注目する人が増えてきている。

以下は、AIの導入を容易にし、すぐに成功に導くために、リスクマネジメントチームが取ることのできる3つの重要なステップである。

1. 発想を転換し、明瞭性を優先する

リスクマネジメントは何十年もの間、非常に意図的な方法で運用されてきた。その結果、グローバルビジネスのスピードと拡大に伴い、確立された成功を収めてきたが、リスクマネジメントはこれまで以上に年中無休体制で取り組まなければならなくなった。さらに、データが他の多くのビジネス分野の主流となっていることから、リーダーは組織内のすべての部門において、同じ知的水準、迅速性、そして「科学的」な成果が生み出されることを期待している。このことは、リスク専門家に対してプレッシャーを積み増している。

新しい技術を導入することは「言うは易く、行うは難し」で、特に運用のフレームワークやワークフローが何十年もほとんど変わっていない場合は、なおさらである。新しい技術の導入には成長痛や頭痛が伴うものであるが、デジタル変革、特にAIの導入に取り組む際にチームが直面する最大の障壁は、考え方を変えることである。幸いなことに、これらは克服できるが、それを正しく行うには非常に明確なガイダンス、目標、手順が必要となる。

例えば、人間である専門家にとって、自からの洞察力が技術に取って代わられるように感じるのは自然なことである。しかし、それは単には実現しない。リスクマネジメントを成功させるためには、人間の直感とインプットが意思決定の指針になることが不可欠であるからである。技術は、さらなる可視性と俊敏性を高めるための手段に過ぎない。したがって、この障壁を克服するために、組織はこの事実を明らかにし、新人研修を通じてそれを強化し、従業員全体が皮肉な考え方を克服し、自分の責任を最適に果たせるように推進することが必要となる。

2. 透明性と説明可能性を追求する

AI技術を導入する際にチームが抱える最大の課題は、透明性と説明可能性の2つである。AIは非常に迅速に意思決定を行うため、透明性と説明可能性は社内での成功と、規制やコンプライアンスの問題が発生しないようにすることの両方において、不可欠となる。

AIから得られる洞察は、AIが忠実に守ろうとするフレームワークを超えてよいものになることはない。また、企業が自社のテクノロジーが学習し、進化する際に狂いが生じないよう、当初に多大な努力を払ったとしても、意思決定や洞察が歪んでしまう可能性がある。そのため、組織は、ある洞察がどのようにして到達したのかを容易に理解できるような「ガラス箱」を提供できるツールを用意する必要がある。それによって、意思決定プロセスにおいてバイアスが生じた場合には、簡単に微調整ができるツールとなることができる。

この利点は、社内の専門家が意思決定の状況をよりよく把握できるようになること、企業が倫理基準に抵触することを積極的に回避できるようになることの2つである。さらに、AI導入にまつわる信用に関わる時間的な経緯に対して、企業が立ち向かうことができるようになる。

3. 実験に対してオープンになる

AI技術から最大限のリターンを得るためには、組織が実験に対してオープンであることが不可欠である。AIは絶えず進化し、変化している。これは、ワークフローの処理方法やAIの使用方法について、一貫した固まった計画を持っていることを好む「伝統主義者」にとっては、不安なことかもしれない。

AIを通じて、企業はこれまでよりもはるかに明確かつ可視的に新興リスクを追跡することができるため、リスクチームはついに「未知の未知」を発見することができる。したがって、リスク専門家は、潜在的な洞察を得るために可能な限り深く掘り下げることを恐れてはならない。AI技術によって、リスク担当者は、これまで有効なアクセスができなかったサプライヤーやその他のリスクソースを調査することができる。

確かに、すべての調査や分析が、最終的に洞察の宝庫につながるわけではない。しかし、この実験によって企業ができることは、推測に頼って何も起こらないことを期待するのではなく、課題が存在しないことを確実に把握することができるようになる。

 

トピックス
サイバー、新興リスク、リスク評価、リスクマネジメント、技術


本翻訳は“ ”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2022/10/11/how-risk-professionals-can-avoid-ai-adoption-headaches ) October, 2022,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
デイヴィッド・ベニグソンは、シグナル AIのCEO兼創設者

【Web特別版】COVID‐19関連の事業中断請求の現状を検討する

コリー・E・ワグナー[*]


 

COVID-19のパンデミックから2年半以上が経過した現在、世界中の企業は、ウイルスが依然として脅威であるにもかかわらず、業務を再開するための新しい革新的な方法を開発してきた。しかし、顧客と従業員の双方に安全な環境を提供するために、企業が業務の軸足を移すにはある程度の時間が必要だった。特にパンデミック発生当初は政府の命令により、多くの企業が一時的な営業停止を余儀なくされた。さまざまな理由から一時的に閉鎖することを選択した事業主もいた。

COVID-19の被害を受けた企業に対し、連邦政府は最終的にPPPローンやその他のプログラムの形で資金援助を行ったが、多くの企業は事業中断の申し立てをすることで、その打撃を肩代わりするのに役立つ保険会社に期待を寄せた。COVID-19からの損害が商業保険の事業中断条項の対象になるかどうかについては当初、州によって判決が異なったが、そのような請求に対する補償は除外するという明確な法律が生まれつつある。

COVID-19関連事業中断請求に関する被保険者による請求は、通常、当該契約書の2つの主要条項、すなわち事業中断および民事当局を引用している。ほとんどの事業中断条項には、ブラウン・ジャグ社とシンシナティ保険会社との裁判で検討されているシンシナティ保険証券に引用されているような言語が含まれている。それは、次のように規定されている。

(シンシナティ保険は、)「復旧期間中」に(原告の)業務を「停止」する必要があるため、(原告が)被ることになる「事業収入」での実際の損失に対して支払う。「停止」は申告書に記載され、保険の「事業収入」限度額が当該申告書に記載されている「敷地」内の財産に対する直接的な「損失」によって引き起こされるものでなければならない。この「損失」は、補償対象の損失によるもの、またはそれに起因するものでなければならない。

事業中断条項に関して裁判所はどのように規定しているか

2021年以降、現在までに、この問題に関して46件の連邦巡回裁判所の判決が下されており、ほぼすべての判決で、裁判所は保険契約が事業収入中断の補償を提供しているかどうかを判断するために、同様の文言を評価する任務を課せられている。意見は若干異なるものの、COVID-19は保険契約文言が要求する「直接的」または「物理的」な損失には当たらないというのが、圧倒的に一致した見解である。むしろ裁判所は、財産の物理的損失は財産自体への具体的な変化、またはその剥奪を必要条件とするとした。

過去2年間、保険契約での文言に関連する規定について表現に相違があっても、裁判所は繰り返しこれらの請求を却下した例がいくつかある。2つの巡回裁判所は、財産の直接的な物理的損失や損害は有形物の損害であることを必要とするとした。COVID-19による施設の使用不能は直接的な物理的損失には当たらないとする判決、保険の「物理的損失」または「物理的損害」の文言は、財産に対する重大な破壊または重大な損害に起因または関連する損失のみをカバーするとした判決もある。

ブラウン・ジャグ社とシンシナティ保険会社との裁判では、裁判所は、原告が損失を示すためには財産の破壊または所有者の占有損失のいずれかを、損害を示すためには財産の直接的な物理的変化を立証しなければならないとした。COVID関連の閉鎖による単なる使用不能は、財産への物理的変化を伴わない場合、直接的な物理的損失には当たらないとした裁判もある。第8巡回区では、財産の直接的な物理的損失または損害をカバーする保険条項は、財産の損失または損害に何らかの物性がなければ、発動されないと判示した。

2021年、ある裁判所は、損失が補償されるためには、財産に明確で、実証可能な、物理的な変化がなければならないとした。直接的な物理的損失は、財産の明らかな破壊または剥奪のみを含むと判示した裁判所もある。最後に、COVID-19に起因する財産に対する実体のない、あるいは無体の損害に基づく使用の喪失に対する補償はされないとし、サーテイン・アンダーライターズ・アット・ロイドズ・ロンドン保険会社を支持した裁判所もある。実際、第3巡回区は連邦控訴裁判所としては唯一、COVID-19と事業中断に関する裁決を下していないところである。

民事上権限条項に関して裁判所はどのように規定しているか

このような裁判で主張される請求のもう一つの共通性は、事業収入の損失は、保険契約にある民事上の権限規定に従って補償されるべきであるというもので、一般に、被保険施設に直接関連する地域の財産に対する損失の直接的原因として、被保険物へのアクセスが民事当局の命令により明確に禁止された場合に被る事業収入の実損を補償するものである。Qクローサー・ニュー・オーリンズ社とツイン・シティ火災保険会社との裁判では、市、州、連邦政府による事業所への立ち入り制限命令は、COVID-19の拡散を低減するために出されたものであり、近隣の資産に対する保険の対象となる損失の直接的な結果として出たものではないため、民事上の権限規定では補償されないと裁判所は判示した。

同様に、ヘンリーズ・ルイジアナ・グリル社と、米国アライド保険会社との裁判における原告は、COVID-19の拡散を防ぐために知事が近隣の事業所への立ち入りを制限した結果被った事業収入損失は、近隣の財産に損害を与えたので補償されるべきであると主張した。しかし、裁判所はこれを認めず、近隣の財産に具体的な物理的変化がなかったため、民事上の権限規定は適用されないと判断した。具体的には、他のレストランや事業所にウイルスが存在するだけで、それらの物件を破壊したり、台無しにしたりすることはない、と指摘した。

ウイルス除外条項

さらに、多くの保険契約には、ウイルス除外条項も含まれている。マドパイ社と、米国トラベラーズ・カジュアルティ・インシュアランス社の裁判では、裁判所はこれらの条項は、「身体的苦痛、病気、または疾患を誘発する、あるいは誘発しうるウイルス、バクテリア、その他の微生物によって生じた、あるいはそれによる損失や損害」を、一般に、補償から除外すると判示した。一部の保険会社は、被保険者の財産の使用を制限する市、州、連邦政府の命令など、他の要因によって損失が生じた場合、その請求はこの除外条項による影響を受けるべきではないと主張しようとした。このような主張も、連邦裁判所によってほぼ退けられている。

保険契約状況の理解の重要性

COVID-19による事業中断の請求は、連邦裁判所ではほぼ全会一致で却下されているようだが、被保険者が州裁判所に提訴することを選択する場合も多くある。ほとんどの保険会社は、連邦裁判所にこの件を移そうとするだろうが、移すことが常に適切とは限らない。とはいえ、最近の州控訴裁判所の判例を調査すると、この種の請求については、州裁判所も概して連邦裁判所と同じ結論に達していることがわかる。例えば、サウスカロライナ州の最高裁判所は最近、サリバン・マネジメント社とファイアマンズ・ファンド保険会社との裁判で判決を出し、COVID-19およびそれに対応する屋内飲食を禁止する政府命令の存在は、直接的物理的損失または損害という保険の発生を示す文言に該当しないと判示した。少なくとも17の州とコロンビア特別区の控訴裁判所で審理された訴訟も、同様の結論に達している。

しかしながら、これらの判例の分析は契約上の解釈に依存しており、少なくとも1つの裁判所は、保険契約の曖昧さを理由に補償の適用を支持したことに留意することが重要である。カジュン・コンティ社とサーテイン・アンダーライターズ・アット・ロイドズ・ロンドン保険会社との裁判では、裁判所は、保険の回復期間の定義で使われている「直接的な物理的損失または損傷」および「修復」という用語に関して「複数の妥当な解釈」があるときには、補償範囲は被保険者に有利に解釈されるべきであると判示した。

したがって、COVID-19関連の事業中断請求が提示された場合、裁判所は一般的に保険会社に有利な判決を下すが、そのような条項が裁判所によってどのように解釈されるかを理解するためには、適用される保険契約条項を理解することが重要である。

 

トピックス
事業中断、請求管理、COVID-19、保険、法的リスク、パンデミック


本翻訳は“Examining the Current Status of COVID-Related Business Interruption Claims ”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2022/10/20/examining-the-current-status-of-covid-related-business-interruption-claims) October, 2022,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
コリー・E・ワグナーは、スイフト・カリー法律事務所訴訟担当アソシエート。一般会社・保険会社、個人顧客の財産、施設、自動車保険および詐欺に関する業務を担当。

記事の詳細を読む

会員の方

非会員の方

SHARE

RIMS日本支部

アプリケーションパスワードを使用すると、実際のパスワードを入力しなくても XML-RPC や REST API などの非対話型システムを介した認証が可能になります。アプリケーションパスワードは簡単に取り消すことができます。サイトへの従来のログインには使用できません。