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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

【Web版】『Risk Management』23年9-10月号
2023-10-26

Risk Management

【Web特別版】

9-10月号

Web特別版RISK MANAGEMENT 9-10月号
INDEX

名声危機を予測し予防するための戦略

ニッル・コソフスキー[*]


複合危機の世界では、かつては限定的であった業務リスクが、コストのかかる利害関係者主導の行動を特徴とする、企業の名声危機(評判の危機)に早変わりする可能性がある。かつては忠誠を誓っていた顧客が製品やサービスをボイコットし、失望した従業員が退職し、投資家が株を売却し、金融機関が金利を調整し、規制当局が強制措置を強化し、不満を抱いた社会的ライセンス保有者が抗議し、そのどれもがいつでもオンライン上での危機を増幅させる可能性がある。

企業の上級経営者にとって、注目に値するリスクの定義は「全社的リスク」、すなわち組織の戦略や目標に対する脅威である。企業危機における損失の深刻さが急増する中、リスクマネジメントに資源を配分することは、次の二つの条件下で、確実に上級経営者が好む戦略となり得る。それは、リスク専門家が企業のリスク遭遇可能性の危機が急増する時期を予測できる場合と、急に高まるリスクを管理することが、著しく増幅する企業コストと名声リスクのロングテールを軽減することを意味する場合である。ありがたいことに、リスクマネージャーは名声のダメージを予測し、防ぐためのツールと戦略を持っている。

企業が連鎖的な企業名声リスクの可能性に着目してリスクマネジメントに取り組めば、多くの重大な危機を回避することができる。この原則を企業の危険に対するリスク戦略や広範な意思決定に組み込むことで、資本コストや収益倍率に好影響を与え、株式売却や利害関係者の離反の可能性を減らすこともできる。リスク専門家は、名声危機がビジネスに与える影響を軽減するために、以下の戦略を検討すべきである。

いつ危険度が高まるかを認識する

部署単位別でリスクを管理することの代償のひとつは、視野の狭さである。複合危機の環境では、リスクの喧騒は絶え間なく続き、この絶え間なさが自己満足を引き起こす。業務リスクや経済的リスクの重要性は、それが全世界に痛いほど明らかになるまで、リスクマネージャーや上級管理職が十分に理解できないかもしれない。

このようなリスクを早期に認識するには、企業レベルの価値破壊は利害関係者の期待の変化から始まることを理解する必要がある。こうした変化に対するタイムリーな可視性の向上により、リスクマネージャーは差し迫った企業の脅威をより適切に予測し、軽減できるようになる。

企業価値リスクをモニタリングするための商売上の、名目的な価格設定の手法は容易に利用可能であるが、必要なほどには広く利用されていない。リスク・モデリング戦略には、クレジット・デフォルト・スワップ価格のモニタリング、株式ベースの暗黙的信用リスク、そして最近ではパラメトリック名声強靭性モニタリングが含まれる。後者の2つの手法は、例えば、最近の地方銀行の信用(評判)危機を数週間から数ヶ月先まで予測していた。

戦略的コミュニケーションを通じて効果的なリスクマネジメントの価値を高める

投資家、顧客、規制当局、訴訟関係者は、リスク戦略を知っていれば、リスク戦略を評価することができる。リスク戦略は統一され、理路整然と、公的書類、企業ウェブサイトで開示され、プレスリリースにおいて(適宜)共有されるべきである。

場合によっては、コミュニケーションとは公表を意味する場合もあるかもしれないが、格付け会社や株式アナリストなどの主要な利害関係者グループへの直接的なプレゼンテーションや、または規制当局や政治家との接触での戦略的リスクマネジメントの議論を含めるという単純な場合もある。

キャプティブを所有しているリスクマネージャーは、他の人よりも良いストーリーの利点を高く評価する傾向がある。収益性の高いキャプティブは、当該リスクマネージャーの指揮系統における個人としての評価を高める。また、商業保険のコスト計算での戦略的な交渉手段も提供する。

より質の高いリスク戦略を示すための重要な要素は、客観的な排他性である。ESGや名声のような企業リスク遭遇可能性に対するパラメトリック保険が資本市場から見て価値があるのは、いくつかの理由の一つである。例えば、ある大手銀行は、カリフォルニア州の大規模な不動産ポートフォリオを損なう可能性のある地震の脅威に対する強靭性を示すために、「パラメトリック地震保険」に加入したことを2019年のESG報告書で初めて公表した。それまでの 3 年間で同業他社を 5% 下回ったが、その後の 3 年間で自己資本は同業他社を 15% 上回った。

最近のスティール・シティ・リー社の調査によると、革新的なリスク戦略について利害関係者に報告した企業は、平均9.3%の自己資本増加を急速に実現した。危機によって試練を受け、効果的かつ先制的なリスク戦略を講じていた企業は、たとえその戦略を事前に開示していなかったとしても、自己資本価値が平均 5% 上昇した。危機に際して、リスク戦略を公表していない企業は、市場比で12%、同業他社比で25%の損失を被った。

名声リスクマネジメントを全社的リスクマネジメント(ERM)に統合する

ほとんどの企業は、名声リスクマネジメントプログラムを迅速かつ容易に重ね合わせることができる既存の全社的リスクマネジメント(ERM)プログラムを持っている。これらのプログラムは、環境・社会・ガバナンス(ESG)戦略、企業の社会的責任戦略、非財務リスク戦略に対する脅威を管理するための環境的な条件である。

企業が利害関係者の期待を理解し、組織がその期待に応え、あるいは管理できることを確認し、失敗の可能性とコストを計算し、そのリスクとコストを軽減するためのツールを導入することを推奨するのは、単純なことのように思えるかもしれない。しかし、プロセスが存在しない、あるいはプロセスを遵守できないために、これらのステップが実行されないケースが後を絶たない。

リスクマネージャーは、潜在的なリスクを特定するため企業の部門間にある壁を超え、名声問題が引き起こされる可能性があることをリーダーに警告する早期警告ツールを含む、関連する情報をフィルタリングして経営幹部や取締役会に伝える戦略的プロセスの一部になる必要がある。

このようなプロセスが既に何らかの形で存在している程度に対応して、リスクマネージャーは、名声リスクの追跡がどのようなものであれ、その有効性を検証するために、分離されている部門をまとめる必要がある。また、関連する利害関係者グループをすべて検討しているかどうか、その利害関係者リストが変更されたかどうか、彼らの課題や優先事項が変化したかどうかを判断する必要がある。すべてのリスクが同じように強固な対応を必要とするわけではないため、コスト、便益、重要性の評価も重要である。また、正確な情報と不正確な情報の両方が瞬時に伝達されるような、過熱しすぎたソーシャルメディア主導の環境では、危機が発生する前に問題に迅速にフラッグを付ける名声強靭性監視システムを確実に設置することがさらに重要である。

新しいツールと名声リスクマネジメント戦略を活用していれば、純財務コストの緩和を助けることによって、最近の多くの注目を集めたリスクマネジメントでの失敗において、大きな違いを生み出すことができたかもしれない。厳しい再保険市場における極端な価格設定を考慮すると、企業の名声リスクマネジメントに焦点を当てることはタイムリーであり、費用対効果の両方に優れている。このような環境下では、リスクマネージャーは重大な企業危機の警戒すべき事項を注意深く監視し、リスクマネジメントプロセスの質の高さを市場に示すために保険を戦略的に利用する必要がある。



著者は、本稿への寄稿における以下の個人の貢献に感謝の意を表したい。

コートニー・デイビス・カーティス(シカゴ大学リスクマネジメント・レジリエンス計画担当副学長補佐)、デイナ・フェン(カミンズ社キャプティブ プログラム担当取締役)、メアリー C.フリードル(レッドボックス社前保険マネージャー)、キャスリーン・A・グラハム(HQ カンパニー社CEO)、クリス・ハモンド(ステパン者全社的リスクマネジメント担当取締役)、エンヤ・ヒー(ブルー・クラリティPBC社アドバイザー)、カーネル・R・ジョーンズ(トリニータス・ベンチャーズ社リスクマネージャー)、クリステイ・カウフマン(ジロー・グループ、リスクマネジメントおよび保険サービス担当副社長)、ジョン C. クライン(ディスカバリー・ファイナンシャル・サービシズ社リスクおよび保険管理担当取締役)、マヌエル・パディラ(マクアンドリュース&フォーブス社リスクマネジメントおよび保険担当副社長)、ソハギャ・パリジャ(ファーストエナジーおよびニューヨーク電力公社元最高リスク責任者)、 クリステン・ピード(CBIZ 全社的リスマネジメント担当取締役)、テレサ・セバーソン(カイト・リアルティ・グループ副社長、保険およびリスクマネージャー)、ソン・ユー(レガル・レックスノード社グローバル リスクおよび資産管理担当ディレクター)、デニス ウィリアミー(スティール・シティ・リー社コーポレート サービス担当副社長)。

本稿で表明された見解および意見は著者たちのものであり、必ずしもそれぞれが所属する会社の公式な方針または立場を反映するものではない。

トピックス

危機管理、全社的リスクマネジメント、名声リスク、リスクマネジメント、戦略的リスクマネジメント


注意事項:本翻訳は“ Strategies for Predicting and Preventing Reputational Crises”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2023/09/25/strategies-for-predicting-and-preventing-reputational-crises ) September 2023,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

ニル・コソフスキーはパラメトリック名声リスク保険およびアドバイザリー・サービスを提供するスティール・シティ・リー社CEO、『名声、株価、そしてあなた:なぜ、市場は企業に報いることもあれば、罰を与えることもあるのか』の著者。

RMISツールの価値最大化に向けた6つのステップ

パトリック・オニール[*]


いかなる事業活動においても、価値観に基づく行動や倫理的な行動を優先することは必要不可欠である。倫理とコンプライアンスの強力な基盤がなければ、組織は評判の低下、法的・財政的な影響、さらには失敗に直面する可能性がある。

基本的なコンプライアンス・プログラムを採用することで、組織は法規制の状況を見極めることができるし、また多額の罰金や金銭的な落とし穴を避けることも、さらには企業とその事業活動に関わる人々が共通の価値観に基づいて行動することで繁栄することもでき、倫理的な職場風土を築くことができる。LRNの調査によると、最も倫理的な文化を持つ企業は、従業員のロイヤリティ、顧客満足度、適応性、イノベーション、成長などの主要な経営指標において、他の企業の業績を40%上回っている。

これらは、企業が経済的逆風、貿易制裁、サプライチェーンの混乱、人員不足などに直面する現在、重要な検討事項である。さらに、貴社の倫理・コンプライアンス・プログラムの有効性は、貴社が訴訟に直面した場合、米国司法省が検討することになる。米国の量刑委員会は、そのガイドラインの影響を明確に示しているため、倫理とコンプライアンスの効果的なプログラムを構築することが重要である。

文化を測定することは、コンプライアンス・プログラムの重要性の一側面である。倫理文化とは、倫理的意思決定に影響を与える個人や組織の価値観、態度、行動を指す。倫理的文化を測定することは、重要な指標を確認することであり、貴社の組織的価値観を理解し、改善すべき点を明確にするのに役立つ。

効果的で測定可能なプログラムを構築するためのプロセスは、組織の成長、軌跡、業界、場所によって異なるが、以下の要素に対処する必要がある。

  1. トップの姿勢。期待を設定して最善の行動をモデル化することは、リーダーシップ・チームの責任である。もし組織内のすべての人を平等な尊敬で公正に扱い、誠実に行動し、価値基準に基づく意思決定アプローチを取っていなければ、他の人にそれを期待することはできない。
  2. 行動規範文書を作成するか、誰も覚えていない古い文書を更新する。行動規範は、期待を反映したものでなければならない。これはミッション、ビジョン、価値観の表明であり、組織内の人々が自らどのような行動を期待されているかを明らかにするものである。行動規範は、従業員が正しいことをするのを支援する上で、視覚的に関与し、読みやすく、有用なガイドとすべきである。差別禁止、ハラスメント、データプライバシーに関する方針に特に注意を払う必要がある。検索可能で、Webベース、およびモバイル対応する場合、従業員は定期的にそれを確認することが可能である。例えば、利益相反のパラメータを確認したり、従業員支援ホットライン番号を見つけたりすることができるように。
  3. 誠実な人材に囲まれることによって、有害な職場風土の芽を摘み取る。新入社員を採用する際には、ミッションに合致し、最善の行動の模範となるような鋭い思考を持つ人を選ばなければならない。面接では、その人の価値観を明らかにするために質問することで、前向きで包括的な職場環境を作り出すことができるし、強い倫理観を持った人々を優先することができる。組織の採用プロセスのすべてのポイントを厳しく見て、現在使っているプロセスや言語が、会社の姿を反映しているかどうかを自問してみる。最も急成長している労働者集団であるZ世代は、目に見える価値観が自分のものと一致しない企業では働かないことに留意する必要がある。良い例を見つけるのに、遠くに目を向ける必要はない。例えば、アウトドアウェア用品メーカーのパタゴニア社の創立者であるイボン・チュイナードは、長い間、環境保護と持続可能性を提唱してきた。企業理念である「最高の製品をつくり、不必要な危害を与えず、環境危機の解決に向けて事業を駆り立て、実践する」は、明確で、志を同じにする人々を惹きつける。
  4. リスクを評価し、倫理的文化を早期に、かつ定期的・高頻度で測定する。人事、法務、コンプライアンス、リスク、情報セキュリティといったそれぞれのチームをチーム・トレーニングやサーベイ活動に同期させることで、バラバラの企業活動がチームに影響するのを防ぐことができる。心情調査を正しいコース・モジュールに組み込み、コンプライアンス・トレーニングの負担を軽減し、感情と感性を測定し、問題領域を特定し、経時的な変化を測定し、業界の同業他社に対してベンチマークできるようにする。優れた倫理とコンプライアンス管理プラットフォームは、データの意味を見つけるのに役立つ。
  5. 報告する力を鍛える。企業は、投資家、従業員、顧客、取引先、地球などのステークホルダーに対して責任を負っている。政府の規制当局は、自社がコンプライアンスを遵守しており、組織のあらゆるレベルでコンプライアンスの文化を効果的に醸成していることを示すためのより多くの証拠を求めている。これらは優れたガバナンスの証左である。環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する指標は、現在、繁栄する事業の指標として財務諸表と並んで位置づけられる。

倫理的文化を測定することは困難であるかもしれない。しかしながら、倫理とコンプライアンスの効果的なプログラムは、事業を保護し、持続可能な成長を促進するために必要なツールと資源を提供する上で、非常に貴重なものとなっている。基盤となるコンプライアンス・プログラムを採用し、倫理的文化を測定することで、強固な職場風土を構築し、評判を損なうことを避け、常に倫理的で責任ある行動をとることができる。

トピックス
コンプライアンス、全社的リスクマネジメント、ESG、規制、戦略的リスクマネジメント


注意事項:本翻訳は“How to Build an Effective Ethics and Compliance Program ”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2023/09/27/how-to-build-an-effective-ethics-and-compliance-program ) September 2023,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
タイ・フランシスMBEは、LRN社の最高顧問。

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