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吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

『Risk Management』21年 7-8月号
2021-07-01

Risk Management

7-8月号

INDEX

危機の中で団結力のある労働力を確保する

トム・バリー

現状、社会的・政治的見解が職場で共有されるのを防ぐことはできない。特に2020年以降、政治から警察の暴力、パンデミックに至るまで、仕事と社会的な議論の境界線はますますぼやけるようになってきた。これは必ずしも悪いことではないが、個人的な意見が両極化することは本当に危機的である。このような両極化を防ぐ秘訣は信頼環境、特に人々が会話を持ち、多様な視点を共有できる本質的に安全な空間をつくることである。

多くの従業員がパンデミックを通じて自宅で孤立してきた。多くの場合、世界で起きている混乱に対して感情を共有する唯一の場所は、物理的あるいはバーチャルな職場である。これまで議論されてこなかったセンシティブな問題は、過去2年間でより開かれたものになりつつある。経験を共有するためのフォーラムを作ることはチームだけでなく、組織全体にとっても重要である。また、従業員一人ひとりが自らの力で仕事に取り組むことを企業が期待する場合には、職場の外で起こっている課題について従業員が話し合い、妥当な場合には、グループとして取り組む機会を設けることが必要である。

次の3つのステップは、分裂と無頓着の文化ではなく、互いを尊重し、前向きな発想を持つ文化を組織が育むことを手助けする。

第1ステップ: 信頼の基盤を創る

信頼を築くためには、チームメンバー間の心理的安全さが最優先される。従業員は心地よい共有感をもって、オープンに傾聴できることを必要としている。ハイブリッドな職場における心理的安全さに関する最近のハーバード・ビジネス・レビューの論文の中で、エイミー・エドモンド教授とマーク・モーテンセン教授は、仕事と生活の境界がますます曖昧になってきており、従業員の経験の幅広い側面を含み、仕事の文脈を超えて心理的な安全さという文化を提供することが重要であると指摘している。

健康診断や愛する人の喪失など個人的な出来事であっても、COVID-19のパンデミックや昨年夏のジョージ・フロイド殺害などのように幅広い人たちに影響を与える出来事であっても、トラウマとなる出来事は人生での現実である。従業員は全身全霊で仕事に持ち込むことが求められることが多い。しかし雇用主はその中にはトラウマも含まれていることを認識する必要があり、ビジネスではそうした出来事が従業員に与える影響を理解しなければならない。リーダー、管理者、同僚はそうしたことに共感し、これらの出来事が従業員の生活にどのような影響を与えるか、本当に耳を傾ける必要がある。これらの感情を共有する安全な空間を提供することは、組織としての信頼を築くために不可欠である。

第2ステップ: 議論の枠組みを決める

信頼が得られたら、リーダーがトラウマを話し合う難しい会話にどのように対処するかが、組織の残りのメンバーがそれをどのように見るかに影響を与える。適切な方法で意見交換するためのアプローチが重要である。

フォーブズ・コーチズ・カウンシルの最近の記事によれば、リーダーが状況の難しい職場での話し合いをうまく進め、より建設的なものにするための16の方法を探索した。その専門家によれば、何が起きたか、誰が影響を受けたか、そしてすべての関係者が前に進むためにどのように計画を立てるかという成果志向のアプローチによって、リーダーが会話の枠組みを定めることが不可欠であることが示唆されている。

また、気遣いをもって聞くことである。問題の他の視点や諸側面にも耳を傾け、共感することが重要である。可能な解決策に向けて確実に、透明で、オープンに対応することである。これは、互いに尊敬し合うという空間で話し合うことに役立つ。異なる意見に留意し、事実を見つめ、チーム一丸となって解決策を模索することは、仲間意識と相互尊重の確立に大きく寄与する。リーダーは、「われわれ全員が一丸になっている」ことを確認すべきであり、従業員は特に混乱や危機の際には、安全な場所で専門的立場から自分の感情を表現するべきである。

過去1年のパンデミックと社会的トラウマの直後、ハーバード・ビジネス・レビューのリサ・ジガーミとデビット・ラーソンの論文によれば、生産的で高い業績を上げる仕事に復帰させる最も早い方法は、心的外傷後の成長(PTG)を活性化するように設計されたストーリー・テリングやストーリー・リスニングを実施することである。PTGは、「大きな逆境との闘いの結果として起こりうる斬新で前向きな変化」、言い換えれば、心的外傷後の闘争から生じる成長である。

彼らが指摘しているように、職場での会話は従業員が心的外傷から意義を生み出すことを可能にし、従業員の気力を高め、人間関係を改善するものである。また、こうした話し合いを促進することが従業員の帰属意識を高め、最終的には、より大きな思いやりと達成すべき目的を導き出す。ジガーミとラーソンは、このストーリー・テリングやストーリー・リスニングのアプローチが、「逆境によって引き起こされた個人の悲嘆と喪失を認識し、その効果と意味を分析し、自己変革を活性化させるような積極的解決策を内在化させることによって、成長を促す」と説明している。

第3ステップ: 議論を促進する

困難な会話の「実行」部分は、複雑になり得る。特にパンデミック後の環境の中、従業員が職場、自宅、または両者を組み合わせた形で仕事するときには、そうなる。一対一の会議では調整は簡単であるが、グループが大きくなれば、誰もが参加でき聞く機会があると皆が感じられるような会議を適切な方法で設定することが重要となる。

職場において、一体感を持てる対話の場を作ることが重要である。職場での勇気をもたらす会話には、複雑で敏感な話題を切り出すことも含まれ、感情かきたてることもありうる。十分に気を配った会話が必要となる。グレート・プレイス・ツー・ワーク社によれば、一体感のある職場づくりを支援する企業組織は、そうした問題について一緒に、タイムリーに話し合う必要がある。そのために、同社は次のように助言する。

  • あらかじめ意図を明確にしておく
  • 従業員が感情、不安、希望、不安を言える場を提供する。
  • 話をすることに特化した時間を設定する
  • 誰もが批判される恐れがなく、意見を共有できると感じられるように、慎重に対話を促すことができる人を用意して、グループや少人数での話し合いセッションを準備する。
  • 基本ルールを設定する
  • 自分の弱さを出せるようにする
  • お互いに支え合う

従業員が安心して話し合えるようにするためのプログラムの実施を検討する。それは円滑なフォーラムを通じて、あるいは、個人間レベルで社会化し、協調し、互いに知り合う機会を創出することによって実現できる。よく言われるように、問題を共有することで問題の半分は解決される。他人と問題について話すことで、しばしば問題自体が軽くなったり、厄介なものでなくなったりすることがありうる。

信頼感を醸成することで職場の仲間が経験を共有し、自らが問題を解決できるようになる。これらの対話は継続的に行われるべきであることを念頭に置き、組織文化となるためのフォーマットを発見することが重要である。さらに、困難あるいは心的外傷的状況は、特に多くの現在の関連する課題のように、簡単には解決されないことを覚えておくべきである。

リーダーのための自己療法

客室乗務員が乗客に自分自身の酸素マスクを最初に装着するよう指示するように、リーダーはどんな障害にも対応できる精神的な準備が整っていることを見せつけることが重要である。自分の感情に正直に従って弱気になったり勇気を発揮したりすることは信頼を得るのには役立つが、リーダーは実際に他の人をリードできるように、自己療法のためのさまざまなツールや戦略を活用すべきである。運動療法、瞑想、休息の優先、健康的な食事、あるいはコーチ、メンター、セラピストからの助言であろうと、企業のリーダーが率先して従業員全員の幸福を優先する環境と職場風土を創出することを支援する、多くの手段が存在している。

皆で一緒に

破壊的あるいは劇的な変化が起きた場合、リーダーは個人のニーズに共感すべできあるが、同時に、自分が決めた方向性や計画に自信を示すべきである。それによって透明かつ脆弱になりつつ、信頼を確立することになる。

現在の社会状況では、リーダーは企業文化を優先し、従業員の健全な関与を促進させる柔軟性を提供する必要がある。トップダウンの独裁的アプローチではなく、学習と解決策の発見に焦点を合わせることは、職場の両極化を緩和するのに役立つであろう。執行役員はこれらの問題を議論する際には、用意された台本に依存するのではなく、自分の言葉で話すようにすべきである。より強力なチームで前進するためには、多様な意見を許容し、他者の経験を理解し、それらが個人レベルにどのように影響するかを理解することが不可欠である。われわれは皆一緒に参加していることを知ることは、このプロセスの重要な一部分である。



注意事項:
本翻訳は“Ensuring a Cohesive Workforce During a Crisis”, Risk Management, July/August, 2021, pp14-15. をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

トム・バリーは会計顧問会社GHJのマネジング・パートナー。

 

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